連載465 山田順の「週刊:未来地図」世界はいつコロナ禍から脱出できるのか? 年内の正常化は期待薄。日本は周回遅れ確実(完)

「享楽の時代」か「新全体主義」か?

 さて、最終的な問題は、ワクチンにより世界が正常化していくとして、「ポストコロナの世界」はどうなるか?ということだ。

 これに関しては諸説あるが、大別して3パターンが考えられている。最初は「元に戻る」ということ。次が「享楽の時代」が来るということ。最後が、世界はデジタルによる統制が進み「新全体主義」になるということだ。

 最初の「元に戻る」は説明の必要はないが、残りの2つは説明が必要だ。享楽の時代というのは、疫病学者のニコラス・クリスタキスが著書で提唱しているもので、歴史を振り返れば、抑圧・隔離の後には必ず解放・享楽が訪れ、人々はどんちゃん騒ぎをするという。

 たとえば、スタジアムは超満員となり、ナイトクラブは人がひしめく。人々はそれまで規制されていた人との繋がりを限りなく求め、「性的放縦」「過剰消費」がやって来るというのだ。

 たしかに、中世のペストの大流行後に「ルネッサンス」が訪れた。スペイン風邪と第一次大戦が終わると、「金ピカの時代」がやって来た。

 「新全体主義」は、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルが唱えている。「デジタル権威主義体制」とも彼は呼んでいるが、要するに、巨大テクノロジー企業(GAFAなど)が社会・経済の大部分を支配し、個人はその監視(ネットワーク)の中で生きるというもの。中国の場合は、企業ではなく国家が個人をデジタルで統制する。これらはコロナ以前から懸念されたことだが、コロナによって加速化し、気がついてみたら、世界は「ディストピア」になっていたというのだ。

近年でもっとも注目される「ダボス会議」

 はたして、私たちの未来はどうなるのか? コロナ収束後の世界はどうなるのか? いまその答えがわかるかもしれないと注目されているのが、次回の「ダボス会議」(世界経済フォーラム:WEF)だ。今年のダボス会議のテーマは「グレートリセット」である。

 コロナで世界経済と政治体制はズタズタになった。これを立て直すには、従来の資本主義、金融システム、政治体制を根本から変えるしかない。それが、グレートリセットである。WEFのHPを見ると、グレートリセットのコンセプトは、環境や格差に配慮した持続可能な資本主義を再構築することとなっている。

 しかし、陰謀論者に言わせると、それはオモテの話で、ウラの話は、世界支配層による“人類の家畜化”だという。コロナ禍はそのための演出であり、私たちの世界はリセットされてしまうのだという。

 たしかに、コロナ禍の前から世界は行き詰まっている。とくに、資本主義とそれを支える金融は、たとえば大不況なのに超株高という、ありえない展開になっている。こんなことが持続可能なわけがない。

 はたして、世界はどう建て直されるのか? そのヒントが今度のダボス会議にあるという。

 なお、今年のダボス会議の年次総会は、1月末のスイスから5月のシンガポールへと変更された。ただし、例年ダボス会議が行われてきた時期の1月25〜29日の期間を「ダボスウィーク」として、セッションをオンラインで開催し、コロナ禍で失われた信頼や原則・信頼・パートナーシップを2021年で再構築するための議論を行う予定という。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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