破壊的イノベーションの進展速度
このように見てくると、いまのところEVがガソリン車よりいくら利便性で劣ろうと、また価格が高かろうと、自動運転が実現してしまえば、あっという間に普及する可能性がある。
ただし、人々はクルマを所有しなくなるので、いま街中にあるクルマの販売所やショールームは数を減らすだろう。ガソリンスタンドもなくなるだろう。住宅につきものの車庫もなくなるだろう。
繰り返すが、自動運転EVというのは、クルマではない。PC、タブレット、スマホと同じコンピュータ端末である。
かつて、携帯電話(ガラケー)の時代があった。携帯電話というのは、固定電話が携帯になるというプロセスを踏んだ電話の発展形だった。しかし、スマホは携帯電話ではなく、コンピュータの発展形で、それが端末として小さくなり通信機能を備えたというもの。携帯電話とは、まったく別物なのだ。
つまり、自動運転EVというのは、従来の自動車ではない。コンピュータが走るというだけだ。これは、ドローンも同じだろう。いまや家電はすべてネットにつながっている。クルマも同じようになる。
このような破壊的イノベーションは、当初は気づかない。初期段階では、試行錯誤が繰り返され、パラダイムシフトが発生するようには見えない。
しかし、スマホがある時期から爆発的に普及したように、自動運転EVも同じ道をたどるだろう。
スタンフォード大学教授エベレット・M・ロジャーズが書いた、有名な『イノベーション普及学』という本がある。ここで提唱された「イノベーター理論」では、新しい製品カテゴリーは、普及率が16%を越えると、それを境にして急激に市場が拡大するという。
はたして、それがいつになるのか? 自動運転に関してはもう目前である。
(了)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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