連載480 山田順の「週刊:未来地図」コロナ禍ではっきりした後進国日本。 日本をダメにした「官邸官僚」政治の戦犯たち(上)

 ようやく「緊急事態宣言」の延長が決まりました(この記事のは初出はは2月1日)が、これまで延々と延長するのかしないのかの議論がされてきたことに、唖然とします。もはや、世界でこんな議論をしている国はありません。また、こんなに規制がゆるい緊急事態宣言も、世界どこにもありません。

 1月31日、オーストラリアのパースでは、たった1人の陽性者が出ただけで即座に3日間のロックダウンに入りました。ワクチンにしても、G7で接種が始まっていないのは日本だけ。やっているのは接種のリハーサルだけで、いつワクチンが届くのかも定かではありません。

 いったいなぜ、こんな国になってしまったのでしょうか? 今回はその理由を「官邸官僚」が支配する菅政権のダメぶりに求めて、詳述します。

コロナ対策、世界で第45位の体たらく

 コロナ禍が起こるまで、メディアでは「日本すごい」論が幅を利かせていた。ところが、いまや、誰一人そんなことは言わなくなった。コロナ禍によって、次々に日本がまったく「すごくない」ことがわかってしまったからだ。

 もはや、日本は「先進国」とは言えない状況だ。いま多くの日本人が、コロナ禍に耐えながら、やりきれない思いで暮らしている。

 年々、国際地位を低下さている日本だが、コロナ対応だけに限っても、日本のランキングは世界45位と本当に低い。このランキングは、先日、オーストラリアの有力シンクタンク「ローウィー研究所」が公表したもので、世界98カ国と地域が、新型コロナにどの程度うまく対応できたかを0〜100で指数化したもの。

 トップはニュージーランドで、2位以下はベトナム、台湾、タイと続き、日本ははるか下の45位である。もっとも、感染者数と死者数が世界最多のアメリカは94位で、英国が66位だから、そこまで悲観することはないと言えるが、アジアでは台湾やベトナムの足元にも及ばないのだから、情けなさすぎる。

 ちなみに、最下位はブラジルで、中国は公開データが少ないため調査対象から外れている。

 この調査では、ランキングよりも注目されることがある。それは調査に対するレビューで、ローウィー研究所は、「強権国家」よりも「民主国家」のほうが総じて点数が高いとし、「私権制限しやすい独裁国家のほうがコロナ対策をしやすい」という見方を否定していることだ。

 また、コロナ対策のポイントは、「指導者への市民の信頼、指導者による適切な国家運営が重要」と指摘している。

 そこで、このレビューに沿って言うと、日本は民主国家としてのレベルが低く、そのうえ、指導層の国家運営が間違いだらけということになる。

 いったい、なぜこんなことになってしまったのか? 以下、「戦犯」をあぶり出しながら、述べていきたい。

コロナ禍でわかった後進国ニッポン

 ではまず、コロナ禍になってわかった、「日本が遅れている」「本当に情けない」「これでは後進国ではないか」ということを列記してみたい。

・デジタル後進国。テレワークの普及率約2割。毎日、出社しないと仕事ができない。

・オンライン授業ができない。いまだに黒板、白墨、紙教科書、ノートでの授業が続いている。

・病床数はOECD諸国で1位、医療設備も完備しているが、救急病床、ICUが足りない。そのため圧倒的に少ない感染者数、重症患者数で医療崩壊を起こした。

・ベトナム、インドネシアなどからの安い労働力(技能実習生)なしに、農業、漁業は成り立たない。私たちは野菜も魚も食べられない。

・コンビニで働くのは外国人。彼らなしに私たちの日常生活は成り立たない。それなのに、ネットでは「外国人はいっさい入国させるな」の声があふれている。

・エッセンシャルワーカー、エッセンシャルワーク従事者の待遇が圧倒的に悪い。

・観光立国は幻想。インバウンドなしに観光業は成り立たない。中国人観光客がいなくなってホテル、旅館の半分は不要となった。

・バイトがなくなり大学をやめざるを得ない大学生が続出した。

・宴会、パーティ、結婚式、イベントがなくなるか減少したため、それらの従事者が、たちまち生活苦に陥った。

・社会全体が不寛容になった。自粛警察が出現。

・道徳、倫理感が喪失。ルールを破る若者が続出。政治家が率先して破っているのだから、従うわけがない。

—–など挙げていけばいくらでもあるが、もっとも深刻なのは、政治家、官僚のレベルの低下により、国が国として機能しなくなったことだろう。

 とくに、首相のステーキ会食に始まった議員の飲食や宴会はあまりにもひどい。いまや、国民の政府への信頼はゼロ。与党・自由民主党は「自由飲酒党」と揶揄される始末だ。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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