連載485 山田順の「週刊:未来地図」このままでは世界の孤児に!  なぜか進まない「ワクチンパスポート」の導入(上)

 いよいよ、日本でもあと1週すれば、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まります(この記事の初出は2月10日)。政府は繰り返しそう言っていますが、これが本当かどうかは始まってみないとわかりません。

 しかし、問題はワクチン接種そのものより、接種が進んだ後の社会がどうなるかです。現在、日本では「ワクチンパスポート」(免疫パスポート)問題が、ほとんど議論もされていません。これは、いわゆる「ワクチン接種証明書」ですが、今後、これがないと、どこにも行けないことになります。もちろん、海外旅行などできません。

 まして、ワクチン接種が遅れているのですから、日本人は「世界の孤児」になりかねません。

日本はワクチン接種で完全な後進国に!

 2月8日、共同通信が「日本のワクチン接種、際立つ遅れ 先進国中、未実施は5カ国」という記事を配信した。なにをいまさらといった感じだが、記事中の次の記述はやはり気になった。

 《新型コロナウイルスのワクチン争奪戦が世界で続く中、「先進国クラブ」と呼ばれるOECD加盟国37カ国のうち、接種が始まっていな

いのは日本を含む5カ国にとどまっている》《東京五輪開催を控える中、感染確認者数が40万人を超えた日本の遅れは際立ち、国際的な信用低下を招く恐れもありそうだ》

 まさに、日本は後進国。それが、コロナ禍ではっきりし、さらにワクチン接種の遅れで、より顕在化してしまった。いまさら、これを嘆いても仕方ないが、私にとってもっと気になったのは、この記事に対する「Yahooニュース」のコメント欄(いわゆる「ヤフコメ」)だ。

あまりに楽観的すぎる日本の世論

 現在、各種の世論調査では、ワクチン接種に関して「早く受けたい」「様子を見て受けたい」という“受けたい派”が増えているが、それでも「ワクチンに不安を感じる」という人は8割に達している。

 そのせいなのか、「ヤフコメ」には、「接種の遅れは大した問題でなない」という主旨の書き込みが多いのだ。

 以下、そのまま引用するわけにはいかないので、いくつか要約してみると、ざっと次のようになる。

 《日本は先進国のなかでもきわめて被害が小さくワクチンの緊急度は比較的低い。いま遅れていることを騒いでも仕方ない。それより、ワクチンの有効性や安全性について信頼できる情報を集め周知することが大切》

 《感染の抑制と、ワクチンの安全性のどちらの優先度をあげるかの問題。接種の遅れは問題ではない》

 《日本はG7のなかでも感染者数が少ない。他国の安全性を確認して接種できるメリットがある》

 《国民もここにきて、やっと接種を受けたい比率が増えた。つい先日までは接種慎重論を大々的に報道したのは誰だ?よくもまあ、こんなことを厚顔に報道できる》

 《日本の状況を考えたら、ゆっくりでよいのでは?感染が爆発し死亡者が日本と比べ物にならない欧米諸国なら、副作用うんぬんを言っていられない。しかし、日本はそこまでひどくない》

 どれも、接種の遅れよりも安全性に重点を置いた、お行儀のいい意見である。楽観的すぎると言ってもいい。

 しかし、接種が遅れていることは、じつは致命的な結果をもたらす。それは、ワクチン接種が進んでいくと、「ワクチンパスポート」(vaccine passport)、あるいは「免疫パスポート」(immunity passport)が必要になり、それがないとなにもできなくなる可能性があるからだ。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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