連載487 山田順の「週刊:未来地図」このままでは世界の孤児に!  なぜか進まない「ワクチンパスポート」の導入(中2)

アメリカでは有志連合がパスポート制作を表明

 1月14日、「マイクロソフト」や「オラクル」、顧客情報管理の「セールスフォース・ドットコム」などでつくる企業有志連合「Vaccination Credential Initiative」(VCI)は、スマホのアプリ上で証明できる世界共通の国際電子証明書「ワクチンパスポート」を開発すると発表した。VCIには、ロックフェラー財団が支援する非営利組織「コモンズプロジェクト」(本部はスイス)や医療非営利団体「メイヨークリニック」も参加している。

 この国際パスポートの目的は、社会生活と経済活動の復活を促進することにある。すでに、世界のエアライン、「ワンワールド」「スカイチーム」「スターアライアンス」の3大航空連合では、PCR検査の陰性結果を示すデジタル証明書を発行しているが、これをアップグレードしたものと考えていいだろう。

 この「ワクチンパスポート」は、顧客のワクチン接種記録をスマホのアプリで管理し、飛行機の搭乗時などに提示する。そればかりか、出勤や登校、イベントへの参加やスーパーでの買い物などにも利用できるようにするという。報道によると、このプロジェクトCEOポール・マイヤー氏は、複数あるワクチンのうちどの種類の接種で入国を受け入れるかなど、各国の政府と協議を進めているという。

 このように、アメリカの動きは素早く、現実的だ。現在、1カ月に2000万人ペースでワクチン接種が進んでいるので、3月ごろには、「ワクチンパスポート」による人々の自由な交流、移動が開始されるだろう。もちろん、アメリカ以外の国でも、「ワクチンパスポート」の導入は急ピッチで進んでいる。

世界各国の「ワクチンパスポート 」の状況

 では、ここから、世界各国の動きを紹介してみよう。

 世界最速のペースで集団接種をすすめているイスラエルでは、現在、ワクチンを2回接種した人とコロナ感染症から回復した人に「グリーンパスポート」と呼ばれるワクチン接種証明書を発行している。

 現地のメディアによると、すでに「グリーンパスポート」を持った人同士は自由に交流しているという。イスラエル政府は、今後、このパスポートによって、イベントの参加や外食、海外への渡航などを認める案を検討している。

 欧州では、アイスランドがもっとも早く「ワクチンパスポート」を実現させた。アイスランドでは、すでに2回接種した国民に対してデジタルの証明書を発行している。

 EUでは、1月21日から、ワクチン 接種者に域内を自由に移動できるオフィシャルな証明書を発行する検討を開始した。これは、主にギリシャなど経済を観光に依存する南欧諸国が、一刻も早い実現を求めたためだ。ギリシャ政府は欧州委員会に対し、すべてのEU加盟国を対象にした「ワクチンパスポート」の共通ルールを早急につくることを要請する書簡を送った。

 そんななか、エストニアは、ワクチン接種証明書所持の旅行者には、検疫・隔離措置を免除すると発表し、WHOとの間で、ワクチン接種データを国境を越えて共有できる電子証明書を開発する契約に署名した。

 デンマーク、スウエーデンなどの動きも早い。デンマークは、独自の電子「ワクチンパスポート」を2月末までに実現させると表明した。デンマーク政府は、今後、社会活動を正常に戻すために、旅行以外でもデジタルパスポートを活用していくかどうか決めるという。

 というわけで、以上の動きを総合すると、EUではおそらく3月には、域内共通の「ワクチンパスポート」が導入されると思われる。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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