連載492 山田順の「週刊:未来地図」とうとう株価は3万円突破! 「高所恐怖症」患者激減でバブル崩壊は遠のく?(下)

連載492 山田順の「週刊:未来地図」とうとう株価は3万円突破! 「高所恐怖症」患者激減でバブル崩壊は遠のく?(下)

そもそも優良大企業の浮動株が少ない 

 日経平均は、一部の寄与度が大きい株で持っている。上位から言うと、ユニクロ、ソフトバンクG、東京エレクトロン、ファナックなどだ。この4銘柄だけで、日経225の構成率の30%を超える。

 そして、こうした寄与度の高い株式は、ほとんどが日銀に買い占められ、浮遊株が極端に少ない。

 ユニクロ(ファーストリテイリング)の場合、日銀の持ち株比率は20%を超えており、浮動株は2%ほどに過ぎない。ソフトバンクGは、2021年3月期 第3四半期決算で純利益が3兆円を超える好決算を

発表したが、それを支えたのが25%を保有するドアダッシュの上場益。しかし、ソフトバンクGの浮動株は5%以下だ。

 東京エレクトロンは日銀が筆頭株主で20%、GPIFが10%を所有しており、浮動株はソフトバンクGと同じく5%以下。ファナックもまた日銀が筆頭株主で、その比率は16%、GPIFが10%で、浮動株は5%未以下。

 この4社と同じく寄与度が高い特定7銘柄に入っているダイキンの場合、日銀が筆頭株主で16%、GPIFが11%で、浮動株はなんと2.8%と極端に少ない。

 このように、日本の優良大企業の株はほとんどが日銀を筆頭とする公的資金に買い占められており、完全に塩漬け状況にある。つまり、日本の資本主義はいつのまにか国家資本主義、社会主義に変質

しまっており、ここからもう戻りようがないのだ。

 黒田日銀は、言わば市場最大の「仕手戦」を行っており、それを恥じ入る様子は皆無である。となると、投資家もまた売るはずはない。売れば日銀に買われ、命取りになりかねないからだ。

「クズ株投資」ロビンフッダーの反乱の影響

 NY市場も、東京市場と同じように、売りが少なくなり、株価は上がるほかない状況になっている。ヘッジファンドはHFTを駆使して売り買いするが、主だった機関投資家のヴァンガード、ブラックロック、ノルウエー政府年金基金などの年金基金、債券運用会社のピムコなどは買い一辺倒で売りはしない。

 そうしたなかで、ロビンフッダーたちの反乱が起こり、これがまた、NY株価を上昇させた。

 ロビンフッダーたちはSNSで談合し、クズ株投資に走った。その標的となったのが、ゲームソフト小売大手チェーンの「ゲームストップ」だった。なんの買材料もないこの会社の株価は、年初の17ドル25セントから一時347ドル51セントにまで暴騰した。

 これは、素人の集団買いで100倍以上の価格の押し上げに成功して、プロの投資家が負けるという史上空前の出来事だった。

 ヘッジファンドとしても名高いメルビン・キャピタルは、ロビンフッダーたちに空売り中心のポジションが狙い撃ちされ、結果的に1月の運用成績が53%のマイナスに落ち込んだ。

 ただし、その後、こうした火遊びは、ロビンフッド自体が取引を中止したために鎮火され、最後の最後にゲームストップ株を買ったロビンフッダーはパニックに陥ってしまった。そしていま、訴訟騒ぎになっているが、市場に大きな影響を残した。

 一つは、こうしたロビンフッダーの出現により、空売りを得意とするヘッジファンドが窮地に追い込まれ、空売りをする力がなくなってしまったこと。

 もう一つは、安いときに買い、割高になったら売るという、「ロングアンドショート戦略」をとる長期運用ファンドまでもが打撃を受けたことだ。

 その結果、いまでは、投資ファンドは買い持ちするファンドばかりになってしまったのである。これでは、株価は上がり続けるほかない。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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