連載493 山田順の「週刊:未来地図」とうとう株価は3万円突破! 「高所恐怖症」患者激減でバブル崩壊は遠のく?(完)

連載493 山田順の「週刊:未来地図」とうとう株価は3万円突破! 「高所恐怖症」患者激減でバブル崩壊は遠のく?(完)

「資本主義の限界」などと言い出したら 

 実体経済からまったく乖離して上がり続ける株式市場に、エコノミスト、専門家たちは言葉を失っている。まして、経済学者など出る幕がなくなっている。いまさらバブルを解説し、バブル崩壊を警告しても、なんの説得力もない。

 そこで、言われ出したのが「資本主義の限界」説だ。コロナ禍のために、失業したり所得を減らしたりする人が続出する反面、富裕層は株価上昇などの金融バブルのおかげで資産を大きく増やした。つまり、格差はますます拡大する一方となり、これを解決するには、これまでの資本主義では無理だというのだ。

 そもそも、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、グローバル資本主義がもたらしたものだと彼らは主張し、経済政策の大転換を要求する。これまでの資本主義は限界に達してしまったというのである。

 しかし、それは私に言わせると単なるゴマカシだ。そもそも、「〜の限界」と言われ出したときに、なにが起こるかというとシフトチェンジである。ただし、資本主義からほかのなにかへのシフトチェンジなど起こるわけがない。起こるとしたら、バブルの崩壊だ。これまでの中央銀行による金融緩和によって発生したバブルを振り返ると、いずれも、「〜の限界」と言われ出して間もなく崩壊している。

 また、「クズ株投資」のような素人投資家の“お祭り騒ぎ”が起こったときも、しばらくして崩壊している。

 ただし、今回にかぎっては、バブル崩壊はまだ先と思われる。なぜなら、まだまだコロナ禍は続き、量的緩和と異常なカネのバラマキが続くからだ。

 バイデン大統領は、1.9兆ドルの経済対策を打ち出している。このうち1兆ドルは家計支援に向けられ、生活者1人あたりで最大1400ドルの現金が追加で給付される。また、失業給付を積み増す特例措置も9月まで延長される。

 日本も新年度予算で、コロナ対策ための巨額の予算が確保され、日銀の異次元緩和は続く。

バブルは弾ける。問題はいつかわからないこと

 とはいえ、バブルはいずれ弾ける。現在の状況は異常であり、これが永久に続くことはありえないからだ。中央銀行がおカネを刷るだけ刷って市場にバラまけば、やがて通貨価値は下がり、手に負えないインフレがやってくる。

 考えようによっては、いまの株価の高騰は、貨幣価値の下落とも捉えられる。

 そもそも金利がマイナス、ゼロなどということがあっていいわけがない。これは経済そのものの否定だ。なぜ、おカネを貸すと金利を払わなければならないのか。金利というのは、経済活動のインセンティブである。冷静に考えれば、金利なしに経済が回るわけがない。

 高所恐怖症患者は、常に「いつ大暴落が起こってもおかしくない」と考え、「いまの相場は高すぎないか」と疑念の目で市場を見ている。彼らが怖がるのは、バブル崩壊に逃げ遅れると、資産のすべてを失うばかりか、多額の負債を抱えることになりかねないからだ。

 株式バブルが崩壊すれば、市場は収拾のつかない修羅場と化し、それを引き金に、あらゆる金融資産が下落する。しかも、次回のバブル崩壊時は、これを救済するための手段が残されていない。コロナ禍で巨額の財政赤字や債務を抱え込んだ政府と、最終手段の量的緩和を使ってしまった中央銀行に、バブル崩壊に歯止めをかける手段は残っていない。

 FRBは、とりあえず2023年いっぱいまでは金利は上げない、テーパリングは行わないとしている。日銀は、もはや万策使い果たし、黒田仕手戦は手仕舞いなどできなくなっている。はたして、この状況がいつまで続くのか?

 バブルはいずれ弾ける。ただ、問題はそれがいつかわからないことだ。

(了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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