連載479 山田順の「週刊:未来地図」コロナ禍で改めて思う「この国のかたち」 すべてに勝る天皇の「お言葉」(上)

連載479 山田順の「週刊:未来地図」コロナ禍で改めて思う「この国のかたち」 すべてに勝る天皇の「お言葉」(上)

 ついこの前、新型コロナの感染が拡大していたとき、識者もメディアも「緊急事態宣言」の発令を大声で叫んでいました。それは、「自粛要請」だけでは効き目がなくなったからです。そして最終的に、要請を守らない人間にペナルティを与えることが可能な「コロナ特措法」の成立となりました。

 つまり、ここにおいて日本は、欧米諸国と同じような法にのっとってロックダウンなどの私権制限の強制措置ができる国になったのです。

 しかし、この一連の経過を見てきて、私には思うことがありました。それは、この国のかたちとはなにかということです。もし、天皇がひと言「みなさん家にいてください」と「お言葉」を下せば、誰もが一歩も外出しなかったと思うからです。

日本人の国民性が感染拡大を防いだ? 

 昨年、新型コロナの感染が世界的に拡大していたとき、なぜか、日本は欧米諸国に比べて感染者数が極端に少なかった。欧米諸国のように「ロックダウン」をするわけでもなく、「緊急事態宣言」を発令しても、その実態は「自粛要請」にすぎなかったから、世界は首を傾げた。

 そこで、言われたのが、日本人の国民性だ。真面目で、規則を守る。そして、思いやりに富んでいる。災害時を見ればわかるように、日本人は互いに助け合って秩序正しく行動する。

 このような国民性が、「マスク着用」「手を洗う」「ソーシャルディスタンスを守る」「三密にならない」という行動を徹底させ、コロナの感染拡大を防いだというのだ。

 これは、確かにそうだと頷けてしまうので、私もある程度は信じた。ただ、麻生副総理のように「民度が高いから」などと、平気で自慢する神経は持ち合わせていなかった。なぜなら、民度という言葉が、真面目で規則正しい国民性と馴染まないと思ったからだ。

 それからもう一つ、こうした国民性の裏返しとして、「自粛警察」というような負の側面も生み出してしまったからである。

マスクに対する考え方、文化の違い

 さらにもう一つ、大きな理由がある。

 それは、日本で感染拡大が広がらなかったのは、国民性というより、「マスク着用」に対する考え方、文化の違いが大きいと思ったからだ。

 これは日本にかぎらず、韓国、中国、台湾など東アジア各国でも同じで、マスクはインフルエンザなどの感染症を防ぐためにするというのが常識になっている。つまり、マスクは自分のためにも、他人に移さないためにも着用しなければならない。

 ところが、欧米人はマスク着用に対して、まったく違う考え方をする。彼らは、マスクは口を覆い隠すため、なにかやましいことがあるからしているのではと考える。つまり、欧米文化では、「マスクを着ける人=犯罪者、異常者」と見られるか、「よほど重大な病気にかかっている人間」と見られてしまうのだ。そのため、彼らはマスク着用を避ける。

 コロナ禍が始まったとき、知人のアメリカ人から「なぜ日本人はマスクをしているのか?」と訝しがられたことがある。当時、アメリカでは、アンソニー・ファウチNIAID所長まで、マスク着用の感染予防効果を否定していた。テレビのインタビューで、彼ははっきりと「マスクを着けても意味がない」と言っていたのだから、いま思い返すと信じがたい。

 これは、WHOも同じ。信用できないエチオピア人のテドロス事務局長は、「健康な人がマスクを着用しても感染を予防できる根拠はない」と述べていた。WHOが見解を変えたのは、2020年6月になってからだ。テドロスは一転して、「他人に感染させないためにもマスク着用を推奨する」と言い出した。

  ただ、ファウチ博士が見解を変えたのはWHOよりも早く、NYの感染拡大が深刻化した4月に、「マスクは必要だ」と言い始めた。しかし、トランプはマスクを着けず、アメリカ人が最終的にマスクを着けるようになったのは7月ごろのことで、このときからマスクは全米で義務化された。

 英国、イタリア、フランス、ドイツなど欧州諸国も、アメリカとほぼ同じ経過をたどった。誰もがマスクを着けるようになったのは、2020年の夏頃からである。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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