連載495 山田順の「週刊:未来地図」コロナ禍で改めて思う「この国のかたち」 すべてに勝る天皇の「お言葉」(中)
同じステイホームでも国より方法が違う
欧米諸国がマスクより重視したのが、「ロックダウン」(都市封鎖)である。中国で成功しているのを見て、これしかないとやり出した。というか、新型コロナの正体がわからなかった以上、疫学的にはこの方法しかなかったの。いわゆる「ステイホーム・オーダー」(外出禁止令)だ。
世界中で「ステイホーム」が行われるようになったとき、以下に紹介するジョークが生まれた。これは、よくあるエスニック・ジョークで、誰もが「そうだ、そうだ」と納得してしまうところがある。
《コロナで、世界各国の政府が国民に「ステイホーム」を求めることになりました。しかし、その方法は各国で違います。どう違うか見ていきましょう。
アメリカ政府はこう発表しました。「外出することは正義に反する」。するとアメリカ国民は外出しなくなりました。
イギリス政府はこう発表しました。「外出することは紳士的ではない」。するとイギリス国民は外出しなくなりました。
ドイツ政府はこう発表しました。「外出することは規律に反する」。するとドイツ国民は外出しなくなりました。
フランス政府はこう発表しました。「外出しろ」。するとフランス国民は外出しなくなりました。
中国政府はこう発表しました。「外出したら逮捕する」。すると中国国民は外出しなくなりました。
日本政府はこう発表しました。「外出の自粛を要請します」。すると日本国民は外出しなくなりました。》
政治家が率先して破った「自粛要請」
このように、日本の「ステイホーム」は自粛要請にすぎないのに、日本人はこれをよく守った。私も、最初の緊急事態宣言発令時(昨年4月〜5月)は、心臓手術後のリハビリ中だったこともあり、一歩も外に出なかった。夏の間も、ほぼ毎日家で過ごした。
しかし、コロナ禍が長引くにつれて、さすがの日本人も「自粛要請」だけでは、行動を規制しなくなった。とくに、「GoTo トラベル」が始まってからは、ほぼ誰も自粛しなくなった。
私も「Go To トラベル」を利用して静養旅行に出かけたので、人のことは批判できないが、旅先であまりにたくさんの「密」と「マスク不着用」を見るにつけ、日本人の国民性を疑うようになった。自粛には限界があると、はっきりと思うようになった。
最終的に「Go To トラベル」は停止されたが、「自粛疲れ」「コロナ疲れ」と言う言葉が生まれ、街の人出は減らなかった。また、時短営業要請を破る店も出現した。そして、なにより最悪だったのは、首相以下の政治家が外食、飲食、集会を繰り返し、自粛をしなかったことだ。自由民主党は「自由飲酒党」になり、日本人の国民性はどこかに行ってしまった。
(つづく)
この続きは3月18日(木)発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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