トランプ前大統領の出現で、アメリカの政治風土は激変しました。いまや、共和党も民主党もカネまみれで、民主主義は機能していません。バイデン政権になったとはいえ、アメリカの「分断」は続いています。
先ごろ、トランプは2024年の大統領選に出馬すると示唆し、多くの共和党議員もそれを受け入れている状況です。このままいくと、共和党は「白人党」、民主党は「非白人党」になってしまうでしょう。
2024年の大統領選に意欲満々のスピーチ
2月28日、フロリダ州オーランドで、「CPAC」(The Conservative Political Action Conference:全米保守政治活動会議)が開かれた。これに登壇して久ぶりにスピーチしたトランプ前大統領は、意気軒昂にこう述べた。「誇りある、勤勉なアメリカの愛国者であるわれわれの運
動は始まったばかりで、最後にわれわれは勝利するだろう。われわれは勝利する」
私は、この映像をYouTubeで見た。そして、「やはり、そうなのか」と思った。トランプはなんら懲りることはなく、いまも指導者気分でいて、それを続けていこうとしている。この人には、引退とか、反省とか、そんなことは、これっぽっちもないのだと——。
トランプはまったく変わっていなかった。
バイデン新大統領に対して「近代史上いかなる大統領のなかでももっとも悲惨な最初の1カ月」と批判し、改めて民主党が2020年の選挙を「盗んだ」と主張した。そして、2024年の大統領選に、「私は彼ら(民主党)を3度負かすために決断するかもしれない」と述べ、再出馬の可能性を示唆したのである。
さらに、トランプは共和党の団結を強調し、第3の党を立ち上げる計画はないと表明した。「われわれは新党を立ち上げない。われわれには共和党が
ある。共和党は団結し、これまでになく強固になるだろう」
映像を見て驚いたのは、トランプが言葉をつなぐ節目では必ず熱狂的な声援と拍手が起こり、出馬に意欲をみせた際には、ガッツポーズをするサポーターまでいたことだ。そして、多くの参加者がマスクを着けていなかった。
マコーネルもロムニーもトランプ支持
このCPACの前、共和党のミッチー・マコーネル上院院内総務は、「FOXニュース」に出演し、驚くべき発言をした。
なんと、共和党員が2024年の大統領選の候補指名でトランプを選んだ場合に支持するかと問われ、「間違いなく支持する」と答えたのだ。
ただ、少なくとも4人の共和党上院議員が大統領選への立候補を検討しているとの見方を示し、「2024年までに多くのことが起こるだろう」と付け加えた。
トランプ支持を再度打ち出したのは、マコーネルだけではない。重鎮のミット・ロムニー上院議員も、トランプが2024年の大統領選に出馬したら、「共和党大統領候補の指名を得るのは確実」と明言したのである。
ロムニーと言えば、トランプの不正選挙の訴えをはなから批判し続け、弾劾裁判でもトランプの有罪を支持した7人の共和党議員の1人である。また、マコーネルは、弾劾裁判でのスピーチで、事実上トランプを糾弾していた。
そんな2人が、トランプ支持だから、「やはり、共和党はトランプに乗っ取られトランプ党になってしまった」と思うほかなかった。そして、それがはっきりしたのが、CPACだったのである。
ちなみに、米メディアや関係筋は、2024年の大統領選に立候補しそうな共和党上院議員として、トム・コットン(アーカンソー州)、テッド・クルーズ(テキサス州)、ジョシュ・ホーリー(ミズーリ州)、マルコ・ルビオ(フロリダ州)の4人を挙げている。また、ニッキー・ヘイリー前国連大使(サウスカロライナ州前知事)を押す声もある。しかし、どの候補もトランプには勝てないだろうと言う。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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