連載502 山田順の「週刊:未来地図」トランプ2024年出馬に意欲。 アメリカの政治腐敗と分断はますます深刻化する!(下)
多くカネを集めた候補が勝つ金権選挙
私は、トランプが大統領選挙に出馬した当時から、バックにどんな勢力がついているのか、選挙資金を出しているのは誰なのかに注目してきた。もちろん、当時の対抗馬のヒラリー・クリントン民主党大統領候補の選挙資金の出し手にも注目してきた。
なぜなら、大統領選挙も含めてアメリカの選挙は、完全な「金権選挙」で、多くカネを集めた候補がほぼ勝つからだ。
共和党議員の多くが、いまでもトランプが集めたカネに群がっている。昨年の大統領選挙では、トランプが集めた資金はバイデンにはるかに劣ったと言われているが、それを握っていたのは、トランプの娘イヴァンカの夫ジャレット・クシュナーである。
共和党議員たちが、この分配金をめぐってクシュナーの下に日参していたのは有名な話だ。
トランプはビジネスマン出身だけに、しょせんすべてはカネだと思っている節がある。民主党にしても、前々回選挙では、ヒラリーが集めた巨額の選挙資金が問題化され、「結局はカネか」と、ヒラリーは庶民層に徹底的に嫌われた。
「スーパーパック」によって選挙が変わった
アメリカの政治が腐敗し、民主主義が破壊され、国が分断されることにまでなってしまった元をただせば、政治献金に関する法律の変更にある。
2010年、連邦最高裁は、企業、組合、個人が、候補者とは独立にキャンペーンを行うなら、政治献金の金額に制限をつけないことを決めた。これにより、「スーパーパック」 (Political Action Committee:政治行動委員会)が誕生し、ここを受け皿に、政党も候補者もいくらでも献金を受けられることになってしまった。
スーパーパックへの献金では、小口の一般支持者の献金額より大口の大富豪の献金額がはるかに上回る。また、大企業、ウオール街マネーなどが、見返りを求めてこぞって献金する。
ちなみに、昨年の大統領選での個人献金では、トップが「カジノ王」で1月に死去したシェルドン・アデルソンと妻のミリアム・アデルソンで、共和党に2億1800万ドルを寄付している。2位は、「金融情報王」マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長で、民主党に1億5200万ドルを寄付している。
共和党への大口献金でよく知られているのは、アメリカ最大の非上場企業とされる「コーチ・インダストリーズ」(Koch Industries Inc.)を率いるコーチ兄弟だ。資産220億ドルと言われる彼らが資金提供して、「茶会運動」(Tea Party movement)が始まり、そこに保守派ポピュリストが結集した。
(つづく)
この続きは3月30日(火)発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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