連載505 山田順の「週刊:未来地図」知らないうちに定年消滅 、 「70歳就業法」施行で「死ぬまで働く時代」に!(上)

連載504 山田順の「週刊:未来地図」知らないうちに定年消滅 、 「70歳就業法」施行で「死ぬまで働く時代」に!(上)

 

 これまで政府が提唱してきた「働き方改革」「人生100年時代」のイメージが、いよいよはっきりしてきました。それは、定年がなくなり、死ぬまで働くということを意味します。
 コロナ禍のなかで「ニューノーマル」(新常態)が定着してきましたが、もうひとつのニューノーマルが、この4月1日から始まります。コロナ報道の陰に隠れて、ほとんど報道されていませんが、これは日本人の人生に大きな変化をもたらします。
 今回施行される「70歳就業法」と呼ばれる法律により、事実上定年は消滅し、引退後のハッピーライフなど“夢物語”になっていくからです。

企業は社員が70歳まで働けるように努力する

 「定年退職」「ハッピーリタイアメント」—-そう言えば、昔はそんなこともあったという、そんな時代が、いま、始まろうとしている。

 コロナ禍のなかでほとんど報道がないが、4月1日から施行される「70歳就業法」(正式には「高年齢者雇用安定法」の改正)は、日本人の生き方を大きく変えてしまうのは間違いない。なぜなら、これによって、定年退職がほぼ消滅してしまうからだ。

 定年がなくなれば、つまるところ、国が言う「人生100年」の間、私たちは一生働き続けることになる。

 「70歳就業法」は、ひと言で言うと、希望する社員が70歳まで働けるように企業に努力する義務を課す、というもの。施行後、企業(大企業も中小企業も関係ない)は、定年制を廃止するか、定年を繰り上げるか、定年後に契約社員などで再雇用し、継続雇用を続けるかなどの対応を取る必要に迫られる。

 罰則規定のない“努力義務”とされてはいるが、将来的に義務化されるのは間違いない。

 そこで、以下、ポイントを整理し、これからの日本人の働き方、人生を考えたみたい。

 まず、もっとも留意すべきことは、この法律が「70歳まで会社員でいられること」を保証するものではないということだ。むしろ、多くの中高年は、今後、人生設計、働き方の大転換を求められることになる。

高齢者の雇用促進、これまでの改正の経緯

 少子高齢化が進むわが国では、これまで半世紀にわたって、高齢者の雇用促進が大きなテーマになってきた。要するに、「終身雇用」「年功序列」というシステムは、少子化で次世代人口が少なくなれば行き詰まるからだ。しかも、高齢化が進むことによって、社会保障費は増加の一途。これまでのように、引退した高齢者を年金などによって養っていけない。そこで、考え出されたのが、「高年齢者雇用安定法」だった。

 1971年に、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として制定された同法は、1986年に「高年齢者雇用安定法」に名称が変更され、今日にいたっている。

 当初は、60歳以上の定年設定が“努力義務”とさた。その後、60歳以上の定年の義務化、65歳までの雇用確保の努力義務、限定した対象者につき65歳までの雇用確保の義務化と、措置の基準がどんどん厳格化。年齢が引き上げられていった。

 そして、2013年、再度改正されて、定年年齢を65歳未満に定めている企業は、次の3つの選択を迫られることになった。
(1)定年制を廃止する。
(2)定年年齢を65歳まで引き上げる。
(3)定年年齢を65歳まで引き上げるに際しては、継続雇用制度(契約社員などで再雇用)を導入して雇用を維持する。

 これにより、多くの企業が(3)を選んだが、今回は、この65歳定年がさらに70歳に引き上げられたうえ、いくつかの選択肢が追加された。
 では、どんな選択肢が追加されたのだろうか?

(つづく)

 

 

この続きは4月2日(金)発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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