連載508 山田順の「週刊:未来地図」世論調査は操作されているのか? 菅内閣の支持率が前月比で上昇した謎を解く(上)
もはや菅義偉内閣が史上最悪の内閣であるということは、国民周知のことであると思います。コロナ対策で失政に次ぐ失政を繰り返し、長男を含めた「違法接待」の発覚で、菅首相は国民の信頼を完全に失ってしまったからです。 ところが、最近のメディアによる世論調査では「内閣支持率」が前月比で上昇しているのです。しかも、読売新聞の調査では48%もあり、過半数に迫っています。なぜ、こんなことが起こるのでしょうか? そもそも世論調査は正確なのでしょうか? 今回は、この点について考察します。
まさかの支持率上昇。しかも48%も!
まず、最近の世論調査による「内閣支持率」を見ていきたい。最新の調査は3月12日に発表された時事通信の調査(実施5~8日)で、それによると、菅内閣の支持率は前月比0.2ポイント増の35%で、不支持率は1.8ポイント減の41%。不支持が支持を上回るのは3カ月連続となっている。
次は3月8日に発表されたNHKの世論調査で、それによると、菅内閣の支持率は、前月比2ポイント増の40%で、不支持率は7ポイント減の37%。こちらは、3カ月ぶりに支持が不支持を上回った。
続いては、NHKと同じ3月8日に発表された読売新聞の世論調査で、それによると、菅内閣の支持率は前月比9ポイント増の48%で、不支持は2ポイント減の42%。なんと、支持が不支持を上回って50%近くに達したのである。
以上、3つの調査とも前月比で支持率が上昇しているのに、私は本当に驚いた。目を疑った。なぜなら、史上最悪と言われた森喜朗内閣より、菅内閣のほうがよほどひどいと思ってきたからだ。当時、森内閣の支持率が9%と、10%を割ったことを思い出す。
私がいつも読んでいる「ヤフコメ」などでも、「信じられない」という声が続出した。あのトランプは、熱狂的岩盤支持層に支えられてきたが、それでも支持率は40%前後だった。
なぜ、菅内閣は、腐ってもここまで高い支持率を維持できているのか? 読売記事は、調査結果を踏まえて、「前回調査の時点と比べ、新型コロナの新規感染者数が減少し、感染状況が落ち着いていることを反映したとみられる」と結んでいた。本当だろうか?
内閣支持率の推移と支持率上昇の中身
いま思い返すと信じられないが、昨年9月末に発足した菅内閣は、当初、高い支持率を誇っていた。もっとも政権寄りとされる読売新聞の世論調査では、なんと74%。これは、内閣発足直後の調査(1978年発足の大平正芳内閣以降)としては、小泉純一郎内閣(87%)、鳩山由紀夫内閣(75%)に次いで歴代3位の高さだった。
驚くのは、読売ばかりか、リベラルを標榜して政権批判が常態の朝日新聞でさえ65%だったことだ。 その朝日の世論調査だが、今年の2月まで次のような経過をたどってきた。
〈Q:あなたは、菅内閣を支持しますか? 支持しませんか?〉
支持すると答えた人の割合
2020年9月=65%
2020年10月=53%
2020年11月=56%
2020年12月=39%
2021年1月=33%
2021年2月=34%
これを見ると、昨年12月で30%台に落ち、その後、30%台を維持しているので、ここが「底」なのかと思える。実際、前記した3つの調査でも30%を割ることなく、逆に上昇しているからだ。
そこで、時事通信の世論調査結果を詳しく見ていくと、支持する理由(複数回答)が、あまりに消極的なことに気がつく。 「他に適当な人がいない」が最多の14.4%で、「首相を信頼する」が8.1%、「誰でも同じ」が7.5%となっている。「首相を信頼する」が8.1%ということは、これだけが本当の支持率ではないだろうか?
「他に適当な人がいない」「誰でも同じ」は、どう見ても支持するとは言えないのではないだろうか?
それは、支持しない理由(同)を見ると、もっとはっきりする。「リーダーシップがない」が22.8%で、「期待が持てない」が21.4%、「首相を信頼できない」が16.1%となっているからだ。つまり、支持しないほうはみな積極的理由なのである。
こうして見ると、各メディアの世論調査報道は、かなりいい加減、あるいはミスリードだと言えるのではないだろうか。見出しに「支持率○%」と掲げ、「上昇」「下落」とだけ表現すれば、それだけしか視聴者、読者に残らないからだ。コロナ感染者報道も株価報道も、みなこのパターンである。
(つづく)
この続きは4月8日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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