連載511 山田順の「週刊:未来地図」世論調査は操作されているのか? 菅内閣の支持率が前月比で上昇した謎を解く(完)
面接調査以外では本当の世論はわからない
世論調査には、いろいろなやり方がある。最近は、ネットによるアンケート調査が多くなり、面談調査、戸別訪問調査などはほとんど行われなくなった、郵送によるアンケート調査なども少なくなった。 そんななか、大手メディアが採用しているのが「RDD」方式である。しかし、これには、ここまで指摘してきたように、大きな問題点があるのだ。
そこで思うのは、もし本当の世論を知りたいなら、面接調査以外にないではなかろうかということだ。調査員が、対象者に個別に会って、直接聞き出すのである。こうすれば、あいまいさは解消され、支持者と不支持者の区別ははっきりつくだろう。また、「どちらかとも言えない」人々の本音も引き出せる。
しかし、これを行うには、相当の時間と費用がかかる。現在の大手メディアではできないだろう。
できるとしたら、国民の資金を潤沢に持っているNHKぐらいしかない。しかし、いまのNHKには、そこまでして本当の世論を調べようなどという気概などない。いまのNHKには国民サイドにたったジャーナリズムをやる気がない。
本当の支持率は20%以下なのに菅の退陣ナシ
前記したように、いまの世論調査に答える人間は、「答えたい人」=「ヒマな人」「わけありの人」などだけである。それ以外の人間は、忙しい、無関心など、いろいろな理由で「答えない人」になる。その数は、おそらく国民全体の半数以上に達しているはずだと、私は推測する。
というのは、国政選挙での投票率は、このところたいてい50%台の前半だからだ。国民の半数しか選挙に行かない。とくに若い20代、30代世代は、投票率30%前後にすぎない。
彼らはハナから、支持する、支持しないなどどうでもよく、完全な無党派か無関心の「政治不信層」であろう。
現在の世論調査は、こうしたなかで行われているので、たとえば「支持率50%=国民の5割が支持」などとはならない。国民の半数が調査に答えて支持率50%なら、残りの半数は政治不信者が多いから、本当の支持率は大きく50%を割り込むはずだ。
この考えでいけば、いまの菅内閣の支持率は、よくて20%、悪くて10%で、森内閣と変わらないのではないだろうか。とすれば、なぜ倒閣運動が起こらないのか?自民党内でもその動きがあっていいとなるが、そうならない理由がある。
自民党関係者によれば、「誰もが貧乏くじを引きたくないので、いま政局にするのを避けている。野党も同じだ。コロナも接待も五輪もぜんぶ菅の責任にして、いまの内閣を8月まで持たせる。そして、9月に首をすげ替えて10月の総選挙に臨む。自民党はこのシナリオで動いている」となる。
(了)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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