連載521 山田順の「週刊:未来地図」 中国の台湾侵攻は近いのか? 「米中対立」激化のなか日本が取るべき一本道(下)

連載521 山田順の「週刊:未来地図」 中国の台湾侵攻は近いのか? 中国の台湾侵攻は近いのか? 「米中対立」激化のなか日本が取るべき一本道(下)

アメリカの対中強硬姿勢は変わらない

 さて、ここで一つ明確にしておかなければならないことがある。それは、バイデン政権になっても、トランプ前政権が行ってきたアメリカの対中強硬姿勢に変わりはないということだ。

 今年の1月12日、アメリカ政府がインド太平洋戦略などについて2018年に承認した内部文書が公表された。本来なら、2043年まで非公表の扱いだったが、ホワイトハウスは一部を編集して機密指定を解除したのである。

 この文書公開で、日本で言われていた「バイデンになったら中国に対して甘くなる」という見方は一変した。

 なぜなら、文書は、中国を「戦略上の主要な脅威」と明記していたからだ。そして、台湾に関しては、中国政府の圧力に屈しないように防衛力を強化すべきだと指摘していた。

 アメリカがすべきことは、中国がアメリカやその同盟国に対して武力行使をすることを阻止することで、そのためには、「紛争時に中国に第一列島線内の制空・制海権を与えないこと」「台湾を含む第一列島線に位置する国や地域を防衛するための防衛戦略を作成すること」としていた。

 つまり、この文書は、アメリカが中国を敵とし、台湾を同盟国として防衛をすることを示唆していた。  現在、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)や「日米豪印の安保対話」(QUAD)が、繰り返し報道されている。こうした枠組みは、すべてアメリカの対中強硬戦略にかなうものだ。さらに、アメリカが「環太平洋経済連携協定」(TPP)に参加すれば、中国包囲網は強化される。

日本が取るべきなのは対中強硬路線

 ここまで書いてくれば、日本が自国の安全のためにすべきことは、明確になったと思う。それは、アメリカの同盟国として、アメリカと足並みをそろえて対中強硬路線に明確に舵を切ること。そして、台湾と同盟を結び、有事には台湾防衛のために自衛隊を派遣できるようにすることだ。そして、できるだけ早く、アメリカに頼らなくてもいい、独自の防衛力を持つことだ。

 その防衛力がアメリカの軍事力と合わせて中国の軍事力とバランスしない限り、日本の安全は保障されない。台湾有事以前に、尖閣諸島を中国に奪われてしまうだろう。

 平和を担保するのは、言葉や話し合い(交渉)ではない。パワーバランスである。それがないと、紛争、戦争が起こる。

 現在の日本の大きな問題は、私たち国民自身に、国土と自らの命、暮らしを守る意思と気概、そして、その力がないことである。それがないと、たとえば、もしアメリカが台湾を見捨てた場合、次は日本が中国の勢力圏に入らざるをえなくなる。

 こう述べると、アメリカが台湾を見捨てる。そんなことがあるのか?と驚く人もいると思うが、それがないとは言えないのは、歴史が証明している。 

(つづく)

この続きは4月27日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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