連載532 山田順の「週刊:未来地図」株価は永遠に上がり続けるのか? いま蘇る「大恐慌」の教訓(上)

連載532 山田順の「週刊:未来地図」株価は永遠に上がり続けるのか? いま蘇る「大恐慌」の教訓(上)

 NYダウは3万ドルを超えてからも上がり続け、先週末(この記事の初出は4月20日)の16日には、またも史上最高値3万4200ドル67セントを付けた。日経平均もこの2月に30年半ぶりに3万円の大台に乗ると、その後、多少の上下があっても下げる気配がない。

 この状況に、市場は総強気となり、「バブル崩壊」を警戒する声はほぼ聞こえなくなった。

 なにしろ、アメリカではワクチン接種が進み、バイデン大統領が約束した7月4日(独立記念日)までには全成人への接種が終わる見通しになった。そうなれば、経済は回復し、好景気がやってくる。日本はワクチン接種が遅れてはいるが、秋には正常化に向かうと予測されている。

 しかし、このような総楽観ムードのなか、あの「大恐慌」(Great Depression)は起こったのである。

史上最高値を更新し続けるNY株価

 アメリカ資本主義にとって、株価は「要」(かなめ)であり、経済を動かす最大の「装置」と言っていい。株価が上昇することで、資産が増え、消費が活発になり、雇用も拡大する。つまり、株価上昇→消費増→雇用拡大という循環で経済が回っていくのが、アメリカの資本主義である。

 そのため、FRB(連邦準備理事会)は株式市場を常に注視し、金融政策によってコントロールしようとしてきた。

 1929年のアメリカ発の「世界大恐慌」は、NYSE(ニューヨーク証券取引所)の株価の突然の暴落から始まった。FRBはこの教訓から、いまも株式市場の動向に細心の注意を払っている。(注:日本の日銀は株価や雇用に関しての責任を負わないので、FRBとは大きく違っている。もっとも日本の資本主義自体がアメリカとは大きく違っている)

 というわけで、現在のNY株価だが、昨年の3月、コロナショックでNYダウが史上最大2352ドルの大暴落を記録したことを思うと、夢のような高値圏にある。あのときは、2万ドルを割るのではないか言われたのに、先週末の終値はなんと3万4200ドルという史上最高値を付けた。ナスダックも1万4000ドル台を付け、市場最高値を更新し続けている。

「GAMFA」時価総額は日本のGDPを超えた

 この株価の上昇を牽引しているのは、GAMFA(Google、Apple、Microsoft、Facebook、Amazonの有力ハイテク企業5社)とされる。そこで、その5社の企業価値(時価総額)を合計してみると、なんと日本のGDP約5兆ドルを超えてしまう。

 また、株価の標準的指数とされるPER(株価収益率)は、ナスダックではなんと70倍を超えている。日本のバブル経済のピーク時、1989年末時点のPERはたしか50倍だったから、これはもはや完全なバブル、常軌を逸していると思われる。

 しかし、市場のどこにも警戒感はなく、投資家の誰もが楽観のなかにいる。株価は上がり続けると信じ切っている。だから、ほとんど売りがない。

 こういうときが、じつはいちばん危ないのではないだろうか。株価は「共同幻想」がつくり出すと言われる。この共同幻想が崩れるときがやって来るのではないだろうか。

 FRBは、先月の「FOMC」(米連邦公開市場委員会)で、2023年末までゼロ金利を維持することを表明した。「金利が上がらないのだから株価は下がるわけがない。それに、じきにワクチン接種が終わり、経済は正常化する。好景気になるのは間違いない」と言うが、信じられるだろうか。

(つづく)

この続きは5月13日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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