連載539 山田順の「週刊:未来地図」「安価地獄」に陥った日本(1) ここまで物価が安いという現実を直視せよ!(中)
「くら寿司」はアメリカでは1皿330円
100円と言えば、もう1つ、回転寿司がある。いまや、回転寿司は世界中に進出しているが、こちらも、「1皿100円」があるのは日本だけだ。
回転寿司の人気チェーン「くら寿司」は、現在アメリカに、「KURA Revolving Sushi Bar」として28店舗あるが、価格は2.75ドル(約300円)に設定されている。日本の3倍だ。ネタやサイドメニューにより5、6ドルのものもあるが、それでも一般の寿司店より格安なので人気だ。
ただこれまで、なぜかニューヨークだけは回転寿司が根付かなかった。ついこの間まで、いや現在もなお、マンハッタンには1軒もない。
ところが、「くら寿司」は、コロナ禍の最中の昨年9月、ニューヨークの対岸ニュージャージー州フォートリーに東海岸1号店をオープンさせた。口さがない向きは、「うまくいかないだろう」と予想したが、これがなんと大当たり。ウエイティングリストに登録しないと入れない人気店になってしまった。
ここでの価格は、2.95ドル(約330円)である。日本の3倍位以上だ。
「くら寿司」は、2014年に台湾の台北に進出し、その後、次々と店舗をオープンさせてきた。今後、台湾で年間5~10店舗出店、3年以内に中国・東南アジアを含めたアジア地域への出店を実現させ、将来的にはアジア200店舗体制を目標としている。
比較的物価が安いとされる台湾だが、それでも価格は40元(約143円)に設定されている。
ディズニーランド入場料も世界一安い
さらに、日本の物価の安さを象徴するものに、ディズニーランドの入場料がある。ここ数年、東京ディズニーランド(TDL)は「1デイパスポート」の値上げを続けてきた。
2014年3月までは6200円だったが、消費増税に合わせて4月から6400円にし、その翌年の2015年には6900円、2016年には7400円、2019年には7500円、コロナ禍が始まった2020年4月には8200円に値上げした。
そして、今年の3月20日からは、土日などに価格を上げるダイナミック・プライシング(価格変動制)を導入し、繁忙時には8700円とした。
これら一連の値上げに、ディズニーファンは不満をぶちまけ、子供がいる家庭からは嘆きの声が上がった。 「これでは、4人家族で出かけたら入場料だけで3万円もかかってしまいます。とても気軽には行けません」
ちなみに子供料金(4~11歳)は4900~5200円である。
しかし、これでもTDLの入場料は、世界のディズニーランドのなかでいちばん安いのである。
次が、世界のディズニーランドの入場料の一覧だ。
カリフォルニア・ディズニーランド:154ドル(約1万7000円)
フロリダ・ウォルト・ディズニー・ワールド:130ドル(約1万4300円)
ディズニーランド・パリ: 109ユーロ(約1万3000円)
香港ディズニーランド:639ホンコンドル(約8900円)
上海ディズニーランド:575元(約8700円)
【注:フロリダのディズニーワールドは4つのパークがあり、1日ですべてのパークに入場できるオプション「Park Hopper」を付けられるので、1デイパスポートでも金額が異なる。ここでは1つのパークしか入れないチケットの値段とした】
どうだろうか。
ここまで安いなら、広い中国、上海のディズニーランドに行くくらいなら、なんでも安い日本のTDLに行くほうがおトクと考えて当然である。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com
>>> 最新のニュース一覧はこちら <<<