連載546 山田順の「週刊:未来地図」ワクチン接種遅れで世界の孤児になる日本人、 富裕層も中間層も続々国外脱出か(上)
インドの感染爆発は例外として、いま、世界全体はポストコロナに向かって進んでいる。その決め手となるのは、やはりワクチンで、接種が進んだ国から社会、経済は正常化に向かう。ところが、日本はワクチン接種の遅れ、感染防止の無策ぶりから、正常化などありえない状況だ。 この6月から、欧米ではワクチンパスポートによる人的交流が再開する。そうなれば、富裕層ばかりか中間層まで、国外脱出が加速化するだろう。そして、残された国民は、世界の孤児になってしまう。今秋には、日本の衰退が、もはや疑いのないものになるのは間違いない。 すでにワクチンパスポートについては、この連載の485〜489(記事の初出は2月)で詳報した。今回は、その続編。
ハンバーガー昼食の首脳会談の意味
ワクチンパスポートによる社会の正常化、国際交流の復活という本題に入る前に、述べておきたいことがある。それは、日本の国際社会における地位の低下が決定的だと思わせる「象徴的出来事」のことだ。
さる、4月16日(日本時間17日)、ワシントンDCで行われた日米首脳会談の冒頭で、バイデン大統領と菅首相は通訳だけを交えた1対1のランチ会談を行った。その後、ホワイトハウスからその写真が公開されたが、その写真はあまりに衝撃的だった。
というのは、ランチがハンバーガーとコーヒーだけだったからだ。しかも、会談時間はたった20分と発表された。
https://foimg.com/00065/1TqTjo (写真)日米首脳「ハンバーガー」会談
こんなことは、前代未聞である。いくらコロナ禍の最中とはいえ、アメリカ大統領がワシントンDCに来た外国首脳との会食に、ハンバーガーを出したのである。もし、日本の首相が来日した外国首脳との会食に、簡単な幕内弁当とか、日本そばとかを出したら、どうなるだろうか? 相手を侮辱しているか、見下しているか、そう取られるに決まっている。 アメリカが、ここまで日本を見下したことは、戦後初めてではないだろうか。
ところが、菅首相も、日本のメディアも、この点に関してまったく思い至っていなかつた。驚いたのは、菅首相のノーテンキぶりだ。菅首相は、記者団に向かって、こう言ったのである。 「ハンバーグを食べながらやろうという話だったが、まったく手をつけないくらい話に(夢中に)なっちゃいまして、昼食べないでやってました」
まず、ハンバーガーをハンバーグと言ったことに、驚く。この人は、ハンバーガーとハンバーグを同じものだと思っているのだ。次に、話に夢中になったというが、たった20分である。通訳がいるので正味10分ぐらいしか話していないのに、なんでこんな明らかに嘘とわかることを言うのだろうか。
続いては、首脳会談後の日本の報道だが、おおむね、「会談は成功し、ジョー、ヨシと呼び合う仲になった」という論調だったのには、耳を疑うほかない。
ニューヨークでは観光客にもワクチン接種
では、ここから本題に入ろう。
日本のメディア報道ではほとんど取り上げらなかったが、ニューヨーク市が観光客にもワクチンを打つと発表したことは、画期的なニュースである。
5月6日(現地時間)、ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長は、記者会見で、市外から訪れる観光客にも新型コロナウイルスのワクチンを接種することを表明した。市長は、このことを「観光振興策」の一環であるとし、「ニューヨーク州の承認が得られ次第、今週末にも開始する」と明言したのである。
ワクチン接種にはワクチンバスを活用し、接種するワクチンは1回で済むジョンソン&ジョンソン(J&J)のものを使うという。 東京は、小池知事が「東京に来ないで」と懇願している。それとは真逆に、ニューヨークでは市長が「ニューヨークに来て欲しい」と宣言したのだ。そのためには、観光客にもワクチンを打つというのだから、驚くしかない。
ところが、日本のメディア報道は、このことに無関だった。自国の緊急事態宣言の延長のほうにばかりに関心が行き、アメリカのことなどどうでもいいといった感じなのだ。
しかし、ここで、想像力を働かせてほしい。もし、観光客へのワクチン接種が実現すればなにが起こるだろうか?
ニューヨークではいま、20台のワクチンバスが走っている。このバスが、たとえばセントラルパークの入り口に停車していれば、そこで、日本人観光客もワクチン接種を受けられる。国内で予約の受付のために苦労する、何カ月も耐えて順番を待つ。そんな必要はなく、ニューヨークに行けばいい。なにしろ、アメリカでは、すでにワクチンが余り出し、ほぼ誰にでも打ってくれるからだ。おまけに、打てばドーナツがもらえたり、マリファナがもらえる。
(つづく)
この続きは6月3日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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