連載547 山田順の「週刊:未来地図」ワクチン接種遅れで世界の孤児になる日本人、 富裕層も中間層も続々国外脱出か(中)
ワクチンパスポートで元の生活に戻れる
ニューヨークの観光客へのワクチン接種が現実化すれば、それに追随する州が出る可能性がある。
たとえば、観光で成り立っているハワイ州、ディズニーランドがあるカリフォルニア州、フロリダ州なども、同様の措置を取るだろう。すでに、アメリカの一部の州では、不法移民にもワクチンを接種しているのだから、観光客にワクチンを打つことにためらうはずがない。
現在、ニューヨークでは、ワクチン接種をすれば、ワクチン接種証明証がもらえる。これは、「エクシオールパス」(NY版のワクチンパスポート )と呼ばれている。私の知り合いのニューヨーク駐在員、在住日本人も、すでにワクチン接種を済ませており、このパスを持っている。
ワクチン接種証明証は、アメリカではどの州でももらえる。そして、これを持っていれば、コロナ以前の自由な社会生活が送れるようになった。
すでに、「CDC」(アメリカ疾病対策予防センター)は、ワクチン接種完了者に対し、国内旅行では出発前と後の検査の必要をなくし、到着後の自己隔離も義務付けなくなった。 飛行機に乗るのも、ホテルに泊まるのも、スポーツ観戦するのも、ワクチンパスポートがあれば「スルー」である。
富裕層はすでにワクチンを打ちに国外脱出
アメリカがこんな状態になったので、私が知っている人間も何人かが、ハワイやカリフォルニア、ニューヨークなどに、ワクチンを打ちに出かけた。
とくに富裕層は、たいていの場合、アメリカのグリーンカードや投資家ビザを持っており、滞在資格があるので、アメリカ入国に問題はない。また、駐在員もEビザを持っているので、入国は難しくない。
現在、アメリカは滞在資格所有者に対しては、入国検査はほぼスルーである。とくにワクチン接種証明証を保持していれば検疫などない。ワクチンパスポートがなければ、PCR検査での陰性証明とオンオンラインによる質問に答えなければならないが、書き込めば、ほとんどチェックされない。もちろん、観光客には厳しいが、今後はそれも緩和されるだろう。
すでにハワイは、ハワイ州政府が指定する日本の医療機関でPCR検査をして陰性証明を得れば、到着後の自己隔離は必要なくなっている。したがって、すでに多くの日本人がハワイに行き、ワクチン接種を受けている。
そんななかで、ニューヨークが観光客にもワクチン接種をすると表明したのだから、今後はビザなしESTAのみの観光客でもアメリカに入国して、ワクチンを打つことが可能になるだろう。
ただネックは、日本に戻るとき、入国後の自己隔離が14日間義務付けられることだ。日本は、ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート )保持者をどう扱うか、まだなにも決めていない。
おそらく今後、ニューヨークには、世界中からワクチン接種を兼ねた観光客が殺到する可能性がある。とくに、日本のような「ワクチン後進国」からは、観光客というより、ワクチン接種を目的とした旅行客が殺到することがないとは言えない。なにしろ、日本では、一般国民が打てるのは年末になるかもしれないと言われているのだ。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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