連載551 山田順の「週刊:未来地図」経済も株価も「一人負け」、 ポストコロナで日本は巻き返せるのか?(中1)
GDPの約60%を占める小売が壊滅
現在、日本経済の状況は悲惨である。なんといっても、4月末から行われている緊急事態宣言の継続で、経済は再び大きく落ち込んでいる。
経済産業省の商業動態統計で、小売りの売上高の推移を見ていくと、2020年の2、10、11月を除けば、2020年1月から2021年2月まで、対前年比はマイナス続きである。それが、3月にやっとプラスになって5%を記録したが、今回の緊急事態宣言で、またマイナスに戻るのは確実だ。
日本経済を支えているのは、GDPの約60%を占める個人消費である。イメージとして、日本経済は輸出が支えている と思われているが、日本経済の大黒柱は個人消費で、これが落ち込めば日本経済は成長しない。消費を増やすには、所得を増やすしかないが、日本人の平均給与はここ30年ほどまったく増えていない。
コロナ禍以前の消費税増税で終わっていた
私がもっとも尊敬している経済学者、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏は、『弱いGDP回復力、コロナで日本の国際的地位は低下する』(ダイヤモンドオンライン 4月1日)という記事のなかで、IMFの推計をもとにして、世界主要国の2019年から2021年にかけてのGDP増加率を比較している。
それによると、アメリカ:2.3%、イギリス:0.9%、イタリア:5.5%、フランス:7.4%、ドイツ:11.8%、中国:14.5%となっている。で、日本はというと、なんと、たったの0.5%である。
ここでは、アメリカ、イギリスの成長率が低いが、この段階ではまだ両国のワクチン接種率の劇的な進展ぶりは加味されていない。
日本はこれまで、感染者数も死亡者数も欧米諸国に比べれば圧倒的に少なかった。それなのに、ワクチン接種以前に、経済において「一人負け」なのである。現在、メディアは、日本経済の低迷はワクチン接種の遅れが原因だと言うようになった。これは、明らかなウソである。また、日本経済の低迷は、コロナ禍が原因でもない。
高齢化と少子化による社会の沈滞、政府の経済対策の失敗が「失われた30年」を招き、いま、コロナ禍がそれに拍車をかけているだけだ。日本経済は、2019年10月の消費税10%への値上げで、完全に終わっていたのである。
スーパー、デパート、航空大手、みな赤字
ここのところ、日本企業の赤字が続々と発表されている。とくに、飲食・小売・観光・交通などの業界は、軒並み業績を悪化させ、すでに多くの倒産企業、赤字企業を出している。
スーパー最大手のイオンが発表した2021年2月期の連結決算は、純損益が710億円の赤字(前期は268億円の黒字)。赤字はリーマンショック後の2009年2月期の27億円以来12年ぶりで、赤字額は上場後で過去最大となった。
また、三越伊勢丹ホールディングスの2021年3月期の連結決算は410億円の赤字である。
最悪なのは航空大手で、ANAが発表した2021年3月期の連結決算は、売上が7286億円と前年度より1兆2400億円あまり、率にして63%も減少し、最終損益で過去最大の4046億円の赤字を記録している。
JALも同じで、売上高が前期比65.3%減の4812億円、最終損益は2866億円の赤字(前期は480億円の黒字)である。 コロナ禍で臨時休業は時短営業を余儀なくされた東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの場合、運営会社のオリエンタルランドの2021年3月の連結決算は、売上高が前年より63.3%減って1705億円、純損益が541億900万円の赤字(前期は622億1700万円の黒字)。これは、1996年の上場以来初の最終赤字である。
総務省統計局のサービス産業動向調査によると、サービス産業の2021年2月の売上高は29.1兆円で、前年同月に比べて10.4%も減少しており、13カ月連続の減少となっている。
なかでも、宿泊業、飲食サービス業は前年同月39.0%減、生活関連サービス業、娯楽業は同23.8%減と、大きな落ち込みを見せている。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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