連載554 山田順の「週刊:未来地図」経済も株価も「一人負け」、 ポストコロナで日本は巻き返せるのか?(完)

連載554 山田順の「週刊:未来地図」経済も株価も「一人負け」、 ポストコロナで日本は巻き返せるのか?(完)

経団連という成長阻害の老人集団

 日本が今後しなければならないことは、まず、この国が「先進国ではない」という自覚を持つことだろう。経済に関しても、「世界第3位の経済大国」などという看板になんの意味もないということを認め、虚心坦懐に改革を行なっていくことだ。

 すでに、日本経済をリードしてきた「技術立国」という立ち位置は消えてしまっている、モノづくりでは、生産のモジュール化により、新興国に勝てない。それなのに、日本企業の組織は硬直化し、いまだに、松下幸之助や本田宗一郎が切り開いてきた道を、後継者世代がなんの疑いも持たずに歩き続けている。

 そして、政治は、2世、3世議員が全議員の3分の1を占めるようになり、年功序列(当選回数至上主義)でポジションを決め、談合によって物事を決める「密室政治」を繰り返している。

 こうした既存の体制を打破しない限り、日本経済は復活しない。政治家の入れ替えはもちろんだが、経団連のような組織も改革しなければならない。なにしろ、経団連は、正副会長19人が全員男性で女性はゼロ。しかも、全員日本人で外国人はいないうえ、いちばん若い副会長でも62歳。さらに、全員がサラリーマン経営者で、起業家が一人もいないのだ。

 5月10日、経団連は、中西宏明会長(75、日立製作所会長)が病気療養に専念するため任期途中で辞任し、住友化学の十倉雅和会長(70)が後任に就く人事を決めた。

 もはや、サラリーマン社長により完全な「老人クラブ」と化している。

日本のワクチン接種、「発展途上国」並み

 現在のような経団連が続く限り、日本には、GAFAのような先進企業は一つも生まれないだろう。イノベーションを起こす企業が生まれない限り、日本経済は回復しない。

 現状維持を望み、政府の応援団と化している経団連は、解体すべきだろう。

 日本企業は、いまだに、社長の息がかかった部下で構成される取締役会を持ち、役員たちには専用車とお抱え運転手があてがわれている。こうした企業は、内部留保をため込むだけで、未来に対する投資をほとんどしない。

 かつて楽天の三木谷浩史会長は、きっぱりと経団連を脱会した。当時のインタビューで、彼はこう言った。「正直言って。経団連は日本企業の護送船団方式を擁護し、これが世の中の共通認識だとカムフラージュするためにつくられた団体なんですね、そもそもが」

 たしかにそうである。それから10年を経た5月14日、三木谷はCNNのインタビューで、東京五輪開催は「自殺行為だ」と批判した。

 五輪が強行開催されれば、日本売りは加速するだろう。「円安、株安」となり、ポストコロナ時代になれば、日本売りはますます進むだろう。東京五輪をターニングポイントとして、投資家は日本の未来を見極めなければならない。

(了)

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【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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