連載568 山田順の「週刊:未来地図」バブル崩壊への「終わりの始まり」か?
株価大幅下落の先にあるもの(上)
週明けの東京市場で、日経平均は1000円に迫る大幅な下落を記録。投資家からは「この先どうなるのか」という不安な声が聞こえてくるようになった。もちろん、日本株の下落は、先週(この記事の初出は6月22日)のNY株の下落を受けてものだが、市場を取り巻く状況は確実に悪くなっているようだ。
コロナ禍が収束すれば、景気は回復するというのは、あまりに単純な見方。本当は、コロナ禍で行われた異常な金融緩和が手仕舞いされるので、インフレとともに金利上昇が起こり、バブル相場は終焉する。
今回の株価の下落は、「終わりの始まり」の可能性が強い。
NY市場で主要3指数のすべてが下落
週明け6月21日の日経平均の大幅な下落は、まさに予想通り。誰もが下がるだろうと思っているなかで起きた。問題は下げ幅で、終値で953円。一時1000円を超えていたなかで、なんとか抵抗ラインとされる2万8000円台を維持した。
しかし、まだまだ下がる。この先、どこかで2万8000円台を割り込んでいくだろう、というのが私の見方だ。
私は株をやっていない。だから、「勝手なことが言える。のん気なもんだ」と非難する向きもあるが、コロナ禍の渦中にあるいまの経済情勢を見えれば、上がるほうがおかしい。
今後、NYダウは4万ドルまでいく。日経平均は3万5000円になるという強気派はまだまだ多い。実際、NYダウは週明けは上昇で始まり、500ドルは戻した。はたして、日経平均がこれに続くかどうか。最近は、日銀が出動しないので、回復はありえないとみる。
日本の株価は、経済情勢、まして企業実績など反映していない。日銀やGPIFと内外の機関投資家がつくりあげたバブルだ。これは、今回の下落の約200円分が、ソフトバンクとユニクロの下落分であることで明らかだろう。NY市場のように、コロナ禍のなかでも成長しているGAFAのような銘柄がない。
もはや書くまでもないが、いちおう一般的な見方を書いておくと、今回の週明けの日経平均の下落は、先週のNY株価の下落を受けてのものだ。先週のNY株式市場は、主3指数(NYダウ平均、ナスダック総合指数、S&P500)がそろって下落し、とくにNYダウは5日連続で下げ、下げ幅は1000ドルを超えた。
この下落原因は、FRBの利上げ前倒し懸念によるものと説明されている。
緩和縮小が想定よりも早まるという観測
アメリカの長期金利は、6月に入ってからは低下傾向にあった。6月9日のNY市場では一時1.47%にまで低下し、5月末と比べると0.1%あまりも下げた。これは、雇用の回復が遅れているからとされた。
ところが、6月16日に、FOMC(連邦公開市場委員会)が開かれ、FRBによる政策金利の引き上げや量的金融緩和の縮小(テーパリング)が想定よりも早まるという観測が流れると、一気に上昇した。
アメリカの長期金利の指標は、10年物の財務省証券(米国債)だが、この金利が前日比で0.08%も上昇、1.57%を付けたのである。こうなると、債券と逆の動きをするされる株価は下落する。
とくに、セントルイス連銀のブラード総裁が、インフレが加速すれば、FRBは2022年にも最初の利上げをすると述べたので、下落は加速した。これまでの見方では、テーパリングは2023年から始まるはずだった。それが前倒しされるというのだ。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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