連載571 山田順の「週刊:未来地図」バブル崩壊への「終わりの始まり」か?
株価大幅下落の先にあるもの(完)
コロナ収束後の金融経済と実体経済の調整
コロナが収束すれば、経済は回復し、好景気がやってくる。それが現在の大方な見方だ。そうすればインフレ基調になるだろうが、それは中央銀行がコントロールできる範囲のインフレ。適切なテーパリングで、アメリカ経済は好調を維持していく。
なにより、コロナ禍から開放された人々は、人生を謳歌し、消費は拡大、企業業績も上がる。そのように、ほとんどの人間が未来を思い描いている。
しかし、それは本当だろうか?
ここまで実体経済と金融経済の乖離が顕著になっているのに、それがなんの調整もなしに、元に戻るだろうか。普通に考えれば、膨らみ過ぎた金融経済が崩壊し、経済の実相は実体経済に戻っていくはずである。バブルによる上澄みが消えてなくならなければ、本当の景気回復などありえない。
2020年末時点の世界の株式と債券発行残高を見ると、その総額は世界のGDPの2.7倍だ。これはリーマンショック時の2.3倍をしのいでいる。となると、次のバブル崩壊は、リーマンショック時をはるかに上回ることになる。
ちなみに日本の場合は、もはやバブル崩壊などという話ではなくなる。なぜなら、「失われた30年」の間ずっとデフレを続け、低成長が定着してしまったため、景気回復する要素が皆無だからだ。しかも、政府も日銀も本気で景気回復させようなどとは思っていない。
もし、日本で金利上昇が起これば、財政も経済もたちまち破綻してしまうからだ。
バブル崩壊を救う「グリーンバブル」
以前にも述べたが、バブル崩壊を防ぐ方法はある。これまでのバブル循環を見てきてわかるのは、バブル崩壊は次のバブルにより帳消しにされるということだ。つまり、政府が次のバブルをつくり、本当の崩壊を先送りするのだ。
今回の株価バブルは、政府と中央銀行が適温相場を続けてきた金融バブルの崩壊を防ぐために、コロナショックをきっかけに市場を救済したことによって生まれた。では、そもそもの金融バブルはいつ始まったのか? それは、リーマンショク後の2009年からである。NYダウは2009年以降約11年間上昇を続けてきた。債券も不動産もバブル化し、「金融バブル」「国債バブル」とも呼ばれてきた。じつはこのバブルも、2008年のリーマンショックによる世界的な金融バブル崩壊の救済措置のために行われた大規模な金融緩和から生まれたのである。
リーマンショックは「100年に1度の危機」と言われたのに、その後、株価も債券も上昇した。日本ではアベノミクスの異次元緩和が始まり、株価は再び上昇に転じた。リーマンショク以前のITバブル崩壊も同じである。
このように、21世紀に入ってからは、バブル崩壊はすべて次のバブル、すなわち、金融緩和によって先送りされたのである。とすれば、次のバブルを防ぐには、株価の大暴落が起こったときに再び大規模な金融緩和をし、その資金を次世代の「脱炭素社会」につぎ込むほかないだろう。「グリーンバブル」を起こすのである。
バイデン政権もEUも、いまや中国までもがカーボンニュートラルを目指し、グリーン投資に邁進している。そして、合言葉は「SDGs」(持続可能な開発目標)である。私は、あまりにも投資額が大きく、リターンが少ないので「グリーンバブル」は成功しない。無理筋ではないかと考えている。しかし、これ以外にバブル崩壊を救う手は見当たらない。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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