連載580 山田順の「週刊:未来地図」五輪強行開催後の日本経済: 不況は深刻化し、株価も不動産も下落する悪夢(上)

連載580 山田順の「週刊:未来地図」五輪強行開催後の日本経済: 不況は深刻化し、株価も不動産も下落する悪夢(上)

 とうとう強行開催することになった東京五輪。二転三転して無観客となり、もはや歴史に残る悲惨かつ大失敗の五輪になるのは確実になった。
 となれば、五輪後の日本はいったいどうなるのか?コロナ禍ですでにボロボロになった経済はどうなるのか? 大いに気になるところだが、なぜか、最近は誰も口にしなくなった。メディアも報道を控えている。
 しかし、現実を直視すれば、不況は深刻化し、株価も不動産も下落するという悪夢が訪れるのは確実ではないだろうか。

 

東京都は「協議を」政府は「都がやるべき」

 4度目の緊急事態宣言の発出、無観客開催が決まると、さっそく関係者間の責任の押し付け合いが始まった。目先の問題は、無観客で失われるチケット収入約900億円の赤字補填をどうするかだ。

 契約上は、その責任は主催者である東京都にある。しかし、小池百合子都知事は無観客が決まる前から「想定外の事象が生じた場合はIOC、政府、組織委を含めて協議が必要になる」と逃げを打ってきた。

 これに対し、丸川珠代五輪相は「東京都の財政規模を踏まえれば、都が組織委の資金不足を補填できない事態は想定しがたい」と述べ、国は財政支援をしない姿勢を強調してきた。

 この両者の責任のお押し付け合いは、本当にひどいものだ。仲が悪いだけではすまない。おそらく、当分の間、決着しないだろう。

 さらにひどいのは、西村康稔経済再生担当相が、7月9日夜のBSフジの番組で、五輪経済効果について聞かれ、「まったく期待していない」と言ってしまったことだ。どう考えても、こう言うほかないが、これを言ってしまうと、なんのために五輪をやったのか、意味がなくなってしまう。確かに、誰が考えても東京五輪は歴史に残る大赤字を記録し、経済的な大失敗になるのは確実だ。

 しかし、開催前にそれを認めてしまっていいのだろうか?

大枚を投じたスポンサー企業の悲鳴と怒り

 今回の東京五輪に、スポンサー企業は大枚をはたいてきた。五輪ともなれば、テレビをはじめとする大メディアは開催前から特番を組むので、宣伝効果は大きい。また、国内外から訪れる大勢の観客に、企業ブランドや商品を存分にPRできる。さらに、経済効果による関連消費も生まれる。

 しかし、そんな期待はことごとく裏切られた。聖火リレーは中止、事前イベントも中止、そして、無観客。

 聞こえてくるのは、協賛企業の幹部たちの悲鳴の声だ。いや、悲鳴はあるときから、政府、組織委、JOCへの恨み節に変わった。「日本政府も組織委もJOCも本当に無能だ」と、怒りを隠さない幹部もいる。

 たとえば、コカコーラなど、聖火リレーに宣伝カーを出しているというだけで売り上げが落ちた。アサヒビールも競技会場での酒類販売の独占がわかって、世間の非難を浴びた。

 無観客が決まるや、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は、お台場に建設済みだった「SK―Ⅱ」ブランドのパビリオンの一般公開の中止を決めざるをえなくなった。トヨタも、会場で使われる輸送車両のデモ走行などのイベントの中止に追い込まれた。

 また、多くのスポンサー企業は、取引先や特別顧客を五輪に招待していた。たとえば、開会式では飲食付き110万円のVIP向けホスピタリティパッケージというチケットを用意し、都内のホテルも予約を入れていた。これらは、すべてパーになった。

(つづく)

 

この続きは8月5日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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