連載593 山田順の「週刊:未来地図」もはや完全に時代遅れ 五輪が「オワコン」となったこれだけの理由(上)
始まってみれば、連日のメダルに熱狂することになった東京五輪だが、すでに「平和の祭典」としても「商業五輪」としても、時代遅れになったのは明白だ。 はたして、次の2024年のパリ、2028年のロサンゼルス、2032年のブリスベンでのオリンピックはどうなるのだろうか? コロナ禍の下で強行開催された東京五輪を踏まえて、五輪はいま大きな転換点を迎えている。 五輪を契機に経済が活性化する、株価が上がるなどという神話は終わり、投資家も市民も、五輪に対する見方を大きく変えなければならなくなった。
中学2年生がスケボーで金メダルの快挙
7月26日(この記事の初出は7月27日)、中学2年生の西矢椛(もみじ)が、スケードボードのストリートで金メダルを獲得した。13歳でのメダル獲得は日本人初の快挙。彼女のあどけない笑顔に、私は思わず涙してしまった。
こうした若者がこれからの日本を変えていく。彼らは希望の星だと思うと、自然に涙が出てくるのだ。 スケードボードでは、前日も男子のストリートで、22歳の堀米雄斗が金メダルを獲ったが、このときも、私は年がいもなくウルウルしてしまった。
今回の五輪は、開催に至るまでに、日本の悪い部分、後進国ぶりがモロに出て、本当に絶望的な気分のなかで始まった。いまもなお、私は開催するべきではなかったと思っているが、それと感情とは別だ。やはり、日本人が、それも若い選手がメダルを獲れば感動し、気持ちが高揚する。
しかも、その種目が、スケードボードとなるとなおさらだ。スケードボードやサーフィン、スポーツクライミングなどは「ストリートスポーツ」(あるいは「シティスポーツ」「アーバンスポーツ」)と呼ばれる、まさにいまの時代のスポーツだからだ。
思えば、スケボーやサーフィンには、中学生のころから自然に親しんできた。湘南で育ったからだろう。そのため私は、スケボーやサーフィンの板を見ただけで、1960年代の半ばの時代をいまもあざやかに思い浮かべることができる。
いま、私はときどき、散歩がてら近所のスケーボーパークの脇で、技を競い合っている中高生たちの姿をぼんやりと眺めることがある。あっ、やっているなと思う。
そんなスポーツで、日本の若者が金メダルを獲る日が来とは、夢にも思わなかった。
さて、五輪がすでにオワコン、時代遅れであるという本題に入りたい。今回、スケボーの話から始めたのは、これがこの本題に大いに関係しているからである。
では、以下、五輪がオワコンである理由を述べていきたい。
理由(1)人気維持のために新競技を追加
スケボーは、今回初めて五輪に採用された新競技の一つである。今回の新競技は全部で5つ。スケボーのほかは、野球・ソフトボール、空手、スポーツクライミング、サーフィンである。
このうち、野球・ソフトボールと空手は、日本開催ということで、開催国への配慮によって採用されたと言っていい。しかし、スケボー、スポーツクライミング、サーフィンは違う。これは、とくに若者に人気があり、その人気が世界規模になっていることで採用された。 新種目ではないが、バスケットボールに加わった「3×3」(3人制)、自転車競技に加わった「BMXフリースタイル」も、同じ理由だ。ストリートシーンなどで普及している「3×3」は、ストリートゲームの典型で、アメリカの都市の街角では、多くの若者がこれを楽しんでいる。
こうした新競技をどんどん取り入れないと、五輪の人気は続かない。これは、商業五輪である以上マーケティングとしては正しいが、規模が拡大する一方となり、また、メダルはインフレとなって、その価値の低下を招く。はたして、こんなことが今後も続けられるだろうか?続けられるわけがない。
ちなみに、今回の東京五輪は33競技339種目で、史上最多となった。339種目というのは、163種目だった1964年の東京大会の倍以上である。4年に1度とはいえ、メダルを量産しすぎではないだろうか。 (つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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