連載616 山田順の「週刊:未来地図」 コロナ禍のなかで起こっている2極化インフレ、富裕層の「資産シフト」が進んでいる(上)

連載616 山田順の「週刊:未来地図」 コロナ禍のなかで起こっている2極化インフレ、富裕層の「資産シフト」が進んでいる(上)

(この記事の初出は8月10日)

 東京オリンピックが終わって、毎日の熱狂が去ってみると、新型コロナの感染爆発が目の前に広がっている。いまや、東京は一時のインドやインドネシアのような状況になろうとしている。ワクチンがすべてを解決してくれると思われたが、デルタ株に関しては通用しないようだ。
 そんななかで、いま密かに進んでいるのがインフレだ。知らないうちにモノが高くなっているのを感じていないだろうか?
 いまだにデフレが続いているが、それは一般物価の話で、高級品は飛ぶように売れ、高級マンションは値上がりを続けている。一方、アメリカは確実にインフレになり、株から債券、不動産、金などへの「資産シフト」が進んでいる。 
 はたして、日本にもインフレがやってくるのだろうか?

 

なぜか飛ぶように売れている高級外車

 五輪後は不況が深刻化し、株価も不動産も下落すると、私はこれまで何度も述べてきた。五輪を強行開催したツケが回り、増税も確実。物価も低迷し、デフレも続いている現状では、こう考えざるをえないからだ。

 しかし、そんななかで聞こえてきたのが、インフレの足音だ。スーパーなどの日常品の価格はあまり値上がりしていないが、高級品はみな値上がりしている。高級外車は飛ぶように売れているし、都心のタワマンなどの価格も上昇している。

 日本自動車輸入組合(JAIA)によると、1000万円以上する外車の販売台数は、この6月、前年同月比60.9%増の3336台と大きく伸びた。この傾向はコロナ禍が始まった昨年からずっと続いていて、最近はより顕著になっている。

 売れているのは、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ、ベントレー、ベンツなど。とくにフェラーリやベントレーは毎月、過去最高記録を更新している。

 この状況に、メルセデス・ベンツ・ジャパンは、7月から最高級ブランド「マイバッハ」の新モデルを投入した。IOCのバッハ会長の不人気ぶりに売れ行きが懸念されたが、クルマのほうはまったく影響を受けなかったという。

 ドイツ車といえば、アウディの「RS6アバント」「RS7スポーツバック」などの高級スポーツ車も飛ぶように売れているという。

デパートの高級品の売れ行きも好調

 高級外車ばかりではない。インバウンドが消滅したデパートでは、高級時計、高級ブランド服、宝飾品、絵画などの売れ行きが好調だ。

 高級時計の場合、以前はたまにしか売れなかった1000万円を超えるものが、毎月、コンスタントに売れるようになったという。スイスブランドの代表のロレックスやパテック・フィリップなどは、毎月売上記録を更新している。

 日本百貨店協会が発表した売上データによると、紳士服部門の売上高は2020年比で毎月マイナス約20%を記録している。ところが、外商部門や特選部門で扱うメンズラグジュアリーブランドは絶好調だという。

 伊勢丹の場合、ディオール、ジル・サンダー、ドルチェ&ガッバーナの高級3大ブランドは20~30%売り上げが伸びたという。テレワークと自粛で、一般サラリーマンのスーツが売れなくなったのに、それと反比例して高級ブランドのスーツは売れているのだ。

 興味深いのは、こうした傾向が都心ばかりか、地方でも起こっていることだ。そごう千葉店、高島屋高崎店、高島屋立川店、大丸神戸店、松坂屋名古屋店などは、特選売り場の販売が好調という。これは、コロナ禍で東京や海外に行けなくなった富裕層顧客が、地元で買い物をするようになったからだと言われている。

(つづく)

 

この続きは9月27日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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