連載620 山田順の「週刊:未来地図」 コロナ禍のなかで起こっている2極化インフレ、富裕層の「資産シフト」が進んでいる(完)
(この記事の初出は8月10日)
問題なのは第3の「金融緩和インフレ」
第2のインフレ「コスト・プッシュ・インフレ」は、供給不足により生じる。原油や鉄などの資材や原材料、燃料費などのコストが上昇するとともにモノの価格が上昇する。日本で起こった1970年代のオイルショックは、典型的な「コスト・プッシュ・インフレ」だった。また、2011年の東日本震災のときも、被害を受けた工場の生産物、海産物、農産物などが供給できなくなり、それらのモノの価格は上
昇した。
このタイプのインフレの特徴は、たとえば石油価格の上昇などによって景気の動向に関係なく起こることだ。農産物の不作でも同じである。したがって、供給不足が解消されれば、インフレは収まるので、それほど大きな問題ではない。
問題は第3の「金融緩和インフレ」だ。これは、中央銀行がおカネを刷って市場に供給するため、おカネとモノのバランスが崩れることで起こる。つまり、あらゆる資産に対するおカネの価値が低下する。
インフレとはモノの価格が上昇することだが、「金融緩和インフレ」ではおカネの価値が低下する。そのため、下手をするとハイパーインフレになり、収拾がつかなくなる。
ハイパーインフレは起こらないとする説があるが、先進国では何十年も起こっていないが、途上国では毎年のように起こっている。
貨幣の信用失墜ともにすべての信用も失墜
いずれにせよ、いま日本と欧米で密かに進んでいるインフレは、2極化している。富裕層と一般層は、コロナ禍のなかで違う世界で生きてきた。
しかし、インフレになった富裕層経済に引きずられるように、一般経済もインフレになってきている。富裕層経済と一般経済は切り離せるものではないからだ。
では、日本のインフレは、どのタイプだろうか?
アメリカや欧州諸国の場合は、金融緩和をしていても、需要が回復してきているので、「デマンド・プル」型と考えられる。もちろん、金融緩和が続いている以上「金融緩和」型とも言える。つまり、複合型のインフレだ。
しかし、日本の場合は、コロナ禍前から不景気であり、世界のどの国も行わなかった「異次元緩和」をやってきたのだから、「金融緩和」型になるのは間違い。
金融緩和が引き起こすインフレは、インフレのなかでも一般生活人にとっては最悪のインフレである。それは、貨幣の信用が失われるとともに、すべての信用が失われるからだ。これを逆に言うと、信用を失わなければハイパーインフレは起きない。つまり、無限におカネを刷るという金融緩和は最終的に信用を失う以上、いつまでも続けられない。
コロナ禍は今後なんとか収束に向かうだろうが、そのとき、日本は本当の岐路に立たされる。
(了)
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