連載621 山田順の「週刊:未来地図」 世界は本当に元に戻るのか?どんどん遠ざかる「コロナ後の世界」(上)
(この記事の初出は8月17日)
今回は、この予測が当たらないことを願って、現在の状況から「コロナ後の世界」を展望する。ついこの間まで、ワクチン接種が進み、集団免疫が達成されれば、世界は元に戻ると思われてきた。
ところが、デルタ株が蔓延するともに、ブレイクスルー感染が発生。ワクチンの接種を終えた人も発症する例が見られるようになって、悲観論が語られるようになってきた。
もしかしたら、ワクチンではパンデミックは収まらず、「ウイズコロナ」は半永久的に続くのかもしれない。
接種を終えても「ブレイクスルー感染」
ついこの間まで、ワクチン接種が進めば、世界は元に戻ると考えられてきた。アメリカでは、独立記念日までに国民の70%が接種を終えるとともに、すべての規制が撤廃されるはずだった。ワクチン接種で先行したイスラエル、英国も、世界に先駆けてコロナ禍から脱出できるとされていた。
ところが、実際は逆だった。
ワクチン接種が進んだ国ほど、感染者拡大のリバウンドが起きている。現在、記録的な感染拡大(第5波)に見舞われている日本でも、感染拡大が止まらない。
その理由として、「デルタ株の感染力が強い」「ワクチン接種をしていない若い層が感染拡大を招いている」と言われているが、はたして本当なのだろうか?
最近の報道を見ると、ワクチン接種を終えた人々が再び感染する「ブレイクスルー感染」が続出している。また、「接種者は感染しても発症が抑えられる」とされてきたが、ブレイクスルー感染者のなかから重症化する例も報告されている。
そのため、「ワクチンは効き目が薄いのではないか」「本当に効くのか」という声も出るようになった。
「デルタ株」「ラムダ株」による感染拡大
現在、世界的に感染を拡大させているのは「変異種」(ヴァリアント)の一つ、インド発の「デルタ株」である。すでに、多くの国で、英国発の「アルファ株」、南アフリカ発の「ベータ株」、ブラジル発の「ガンマ株」に置き換わっている。
CDC(米疾病対策センター)の発表によると、デルタ株は水ぼうそう並みの強い感染力があり、ワクチン接種者も感染する可能性があり、従来のコロナ株より重症化する恐れがあるという。しかも、ワクチン接種者が感染した場合、未接種者と同様に他の人に移すという。
CDCは7月30日に、マサチューセッツ州で発生した公共イベントによるクラスターの調査結果を公表したが、それによると、感染者469人中、73%がワクチン接種を完了しており、感染者133人から採取したウイルス検体の90%がデルタ株だった。
デルタ株と並んで脅威とされているのが、ペルーやチリなどで広まった「ラムダ株」である。WHOによると、すでに世界の45の国や地域で確認されており、日本でも東京五輪直前に上陸したことが確認された。ラムダ株に関しては正確な研究・報告が出ていないが、感染力も重症化もデルタ株並みに強いとされている。
これでは、ワクチン接種が進んでも、感染拡大が収まらないのは無理もない。
(つづく)
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