連載622 山田順の「週刊:未来地図」 世界は本当に元に戻るのか?どんどん遠ざかる「コロナ後の世界」(中)
(この記事の初出は8月17日)
接種が進んでいる国ほどリスクが高い
それにしても驚くのは、CDCのサイトに掲載されている「渡航警告レベル」のリストだ。レベル4の「Very High」(感染リスクが非常に高い)、レベル3の「High」(感染リスクが高い)に並んでいるのは、ワクチン接種の進捗上位国がほとんどだからだ。
以下、主な国をピックアップする次のようになる(国名の後の%はワクチン接種率)。
レベル4:マルタ79%、アラブ首長国連邦73%、アイスランド71%、ウルグアイ66%、チリ65%、バーレーン 65%、ポルトガル60%、スペイン60%、イスラエル60%
レベル3:カタール64%、ベルギー63%
このうちもっとも驚くのはアイスランドで、この国は感染抑止に成功した優等生とされ、ワクチン接種が進むとともに、6月に欧州でもっとも早く規制を完全に撤廃した。ところが、その直後から感染爆発が起こり、再びロックダウンをせざるをえなくなった。
英国、フランス、オランダなどの欧州各国でも、ワクチン接種の進捗と反比例して感染拡大が起こり、いまだにピークアウトしていない。
シノバック、シノファームのワクチンは効果が薄いとされてきたが、それを証明するように、中国ワクチンの接種国は感染拡大が続いている。しかし、高い効果があると言われた欧米ワクチンでも同様の感染拡大が起こったことは、各国政府にとっても、開発者、研究者たちにとっても衝撃的だった。
「ブースターショット」が必要になった
ブレイクスルー感染が報告されるようになって言われ出したのが、接種後の抗体レベルの減少だ。7月末、ファイザーは「接種後半年経過した一部の人間のなかで抗体レベルの減少が見られる」とし、「3回目の接種(ブースターショット)も必要になるかもしれない」と表明した。モデルナも、同様の見解を表明した。
以後、3回接種が常識化し、イスラエルはいち早く、3回接種に踏み切った。
イスラエルに続いて、英国も踏み切りことを表明し、欧州諸国、アメリカもこの動きに追随した。米保健当局は、コロナに対して脆弱な階層優先で、ファイザーとモデルナのワクチンのブースターショットを今月中にも承認することになった。1回目の接種すら進んでいない日本も、河野太郎ワクチン担当大臣が「来年にはやりたい」と表明した。
NIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)のアンソニー・ファウチ所長は、8月12日(現地時間)、CBSテレビのインタビューで「いつかはあらゆる人が新型コロナウイルスワクチンのブースターショットを受けなければならないだろう」と述べた。 最近のスウェーデンの報道によると、「ブースターショットは5回まで必要」という研究者が出てきている。こうなると、毎年、インフルエンザのワクチンを打つように、コロナも期間を経て何度も打つようになりかねない。つまり、「コロナ語の世界」は訪れず、「ウイズコロナ」が半永久的に続くことになる。
(つづく)
この続きは10月5日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
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