連載625 山田順の「週刊:未来地図」 異常気象が拍車を! 気がつけば「悪性インフレ」で生活崩壊か? (上)
(この記事の初出は8月24日)
コロナ禍に気を取られて、多くの人が気づいていないのが、インフレの足音。欧米では景気回復とともにインフレが進んでいるが、日本はいまだにデフレのままだ。ただし、最近は、少しずつだが物価が上昇している。
世界的なインフレに拍車をかけているのが、異常気象。このまま異常気象が続けば、金融バブルが招いたインフレにモノの供給不足によるインフレが加わり、物価はどんどん上昇する。そうなれば、日本の場合は「悪性インフレ」(スタグフレーション)に陥る可能性が強い。
コロナ収束後の世界は、いまよりもさらに過酷な世界かもしれない。
インフレが止まらなくなっている欧米
インフレに関しては、欧米ではすでに多くの警告が発せられている。
アメリカでは、今年の3月から消費者物価指数(CPI)が前年同月比で上がり続けてきた。3月2.6%、4月4.2%、5月5.0%、6月5.4%。この6月の5.4%は、2008年8月以来、約13年ぶりの高水準で、7月も同水準となったため、イエレン財務長官は「いずれ鈍化する」という声明を出さざるをえなくなった。
8月4日、イエレン長官はアトランタで記者団に対し、「インフレ率は年間ベースで当面は高止まりするだろう」と述べた後、「ただし、年末までにFRBの物価安定の目安と合致するペースまで下がるだろう」と続けた。
FRBの目標というのは、前月比0.1%ないし0.2%を意味する。しかし、いま、これを信じる者はいない。
欧州でもCPIは、この5月から前年同月比2%を超えた。そのため、ECBはとりあえず、目標とする物価上昇率を「2%未満でその近辺」から「2%」に変更し、2%以上を容認せざるをえなくなった。
インフレが進むと金利は上がる。それを警戒するムードが高まったので、ECBは最近になって、「物価上昇は年末までに収まる」という声明を出している。
日本は別世界。いまだにデフレが続く
欧米がこの状況なのに、日本は別世界。いまだにデフレが続いている。もっとも、この「失われた30年」の間ずっと別世界だったので、別に驚くべきことではない。
総務省が8月20日に発表した7月のCPIは生鮮食品を除く総合で0.2%のマイナス。マイナスは、なんと12カ月連続である。
欧米諸国では、ワクチン接種の進展に合わせて規制を緩和させ、それにともなって経済回復が進んだ。これが物価上昇を招いたわけだが、日本はいまだにワクチン接種も進まず、緊急事態も解除できない。
この差は大きい。日本では、物価上昇率が2018年11月以降、1度も1%に届いたことはない。
日本でいまだにデフレが続く原因として、携帯電話料金の値下げなどの政策要因が上げられている。しかし、そんなこと以前に、そもそも内需が弱いこと、つまり、経済が低迷していることが最大の原因だ。
コロナ禍があろうとなかろうと、日本経済は構造的に不況なのであり、これが改善されない限り、インフレには向かわないのである。
ただし、不況でもインフレにはなる。それは「悪性インフレ」と言われる「スタグフレーション」である。
(つづく)

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