連載626 山田順の「週刊:未来地図」 異常気象が拍車を! 気がつけば「悪性インフレ」で生活崩壊か? (中)
物価上昇も怖いが、ステルス値上げも怖い
コロナ禍が起こって1年半。この間、ほとんど閉じこもり生活となったため、私が外出するのは近所のスーパーがいちばん多くなった。それで感じるのは、最近、食料品の値段が上がっていることだ。
とくに、野菜の値上がりがひどい。たとえば、キュウリ1本の値段が、ついこの前までは30~40円ほどだったのが、最近は倍の70~80円である。先日、ナスを買ったが、1袋の値段が以前より倍近くになっていた。
これは、今年の夏の異常気象の影響で、野菜の価格が軒並み高騰したからだ。東京中央卸市場では、キュウリの卸価格は8月10日で1キロ143円だったが、10日後の20日には499円と、3倍以上も値上がりした。
つまり、モノの供給が不足すれば、好況だろうと不況だろうとインフレになる。不況の下でインフレになるのがスタグフレーションで、最近の日本はそうなる兆しが見えてきている。
たとえば、「ステルス値上げ」と呼ばれているモノの値上げがある。これは、商品の価格を据え置いたまま内容量を減らすこと。これまで「120グラム100円」で売っていた商品を「100グラム100円」で売れば、それはステルス値上げで、ポテトチップス、チョコレートなどから始まり、主に食料品を中心に広範囲で行われてきた。
英語では、これを「シュリンク」(縮む)と「インフレ」を合わせて「シュリンクフレーション」と呼んでいる。
こうしたステルス値上げもまたインフレであり、目に見えない価格上昇だ。いまの日本では、これが進んでいる。この7月から、キューピーと味の素のマヨネーズが値上げをしたが、ステルス値上げでなくちゃんと価格を上げたため、それが評価されるという不思議な出来事が起こった。
原油、非鉄金属、穀物などみな高値圏に
先日発表された「米国供給管理協会」(ISM)の製造業景気指数は、6月が60.6、7月が59.5で、2カ月連続で鈍化したものの、景気拡大・縮小の節目となる50を大きく超えていた。物価に関しては、仕入れ価格指数が85.7で、過去最高を付けた6月の92.1から低下したが、依然として高水準にある。
アメリカ経済は、すでに完全なインフレ基調になっていると見ていいだろう。
インフレは、景気回復、好景気の現れとされるが、警戒すべきことがある。それは、原因がモノ不足にあるときだ。いまのインフレは、これまでの金融バブルによるインフレに加えて、世界的な資源不足、穀物不足から来ているのは、間違いない。
国際商品の総合的な値動きを示す「トムソン・ロイター・コアコモディティーCRB指数」は、ずっと高値圏にある。
この指数は、アメリカと英国の各商品取引所で取引されている先物取引価格から算出されるものだが、指数に大きな影響を与えるのは、原油、非鉄金属、穀物である。 この指数は、今年の初めは170ほどだったが、7月下旬には220まで高騰した。
とくに穀物相場は高騰している。シカゴ商品取引所では、小麦の先物が7月下旬に年初来の高値を更新した。大豆やコーヒー、砂糖相場なども、高値圏で推移している。
(つづく)
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