連載627 山田順の「週刊:未来地図」 異常気象が拍車を! 気がつけば「悪性インフレ」で生活崩壊か? (下)

連載627 山田順の「週刊:未来地図」 異常気象が拍車を! 気がつけば「悪性インフレ」で生活崩壊か? (下)

地球温暖化による異常気象が続いている

 言うまでもないが、現在、穀物の相場を高騰させている原因は、世界中で発生している異常気象である。東京五輪があったので、日本ではほとんど報道されなかったが、世界中で大規模な森林火災や山火事、干ばつなどが、次々と起こった。日本でも、東京五輪後はいつもの夏とは違う記録的な豪雨が続き、各地に大きな被害をもたらした。

 アメリカのカリフォルニア州デスバレーでは、7月9日、54.4度を記録。その後、州北部で起きた山火事では、東京都に匹敵する約2000平方キロが焼失した。

 このような大規模な森林火災や山火事は、アメリカだけではない。カナダ、ロシア、トルコ、ギリシャ、レバノン、アルジェリアなど世界各地で発生し、甚大な被害をもたらした。

 ロシアの場合、500カ所以上で森林火災が続き、火災面積が2000平方キロに迫り、8月7日、モスクワは濃いスモッグに覆われ、脱出する市民が相次いだ。また、シベリアの極東サハ共和国では、すでに6600平方キロが焼失したという。

 森林火災の一方で、豪雨や洪水被害も多発している。ドイツでは7月中旬に、集中豪雨に見舞われ、各地で洪水が発生し、家屋、道路、橋が損壊した。復旧には260億ユーロ(約3兆3590億円)以上かかると報道され、死者は隣国ベルギーと合わせて200人を超えた。

 こうした異常気象は、地球温暖化のためとされ、「IPCC」(国連の気候変動に関する政府間パネル)は、8月9日、報告書を公表して、次のように警告した。「温室効果ガスを多く排出し続けると世界の平均気温は産業革命前と比べて2021~40年の間に1.5度以上上昇する可能性が非常に高く、排出量を低く抑えても1.5度を超える可能性がある」

世界各地で起こった穀物減産の具体例

 地球温暖化に伴う自然災害は、現在、世界各地で深刻化している。地球温暖化の犯人が二酸化炭素であるのか、それとも長期的な気候変動なのかどうかはわからない。私は、二酸化炭素を減らすだけの「カーボンニュートラル」政策は行き過ぎだと思うが、そんなことを言っている猶予はないほど、被害は深刻化している。
 以下、その例を列記してみよう。

[アメリカの小麦]
 アメリカは、中国、インド、ロシアに次ぐ世界第4位の小麦の生産国だが、中西部の小麦生産地帯(グレートプレーンズ、プレーリー)が、干ばつと水不足に陥り、大きな被害を受けている。被害の全体像はつかめていないが、大きく減産するのは間違いないとされている。
 一方、トウモロコシや大豆などの被害は限定的とされる。

[カリフォルニアの水不足]
 大規模森林火災と干ばつにより、カリフォルニア州の水不足は、深刻な状況に達している。今年の干ばつは、これまで経験したことがないもので、1977年以来、最悪の干ばつとされ、農作物の被害は深刻化している。

[カナダの菜種]
 カナダは菜種の主要産地。近年、菜種油は温暖化ガスの削減によって需要が高まり、これまで価格が上がってきたが、今年はさらに高騰している。これは、7月の熱波の影響が大きい。カナダ・ブリティッシュコロンビア州リットンでは7月28日に、47.5度を記録した
 菜種のほか、トウモロコシ、大豆、パーム油など植物油の需要は高まる一方で、国際相場は下げ材料が見当たらない状況になっている。

[ブラジルのコーヒーとトウモロコシ]
 今夏、気候変動の影響をもっとも受けたのが、ブラジルの穀物生産。干ばつと降霜が繰り返され、なんと64年ぶりに雪が降ったこともあり、コーヒーとトウモロコシの生産が激減した。
 コーヒーの最大のリスクは降霜だが、これを避けるために生産地を温暖地域に移動したにもかかわらず、降霜にあったのである。そのため、ブラジル産のアラビカコーヒーの価格は、8月の最初の週に約7年ぶりの高値を記録した。
トウモロコシの場合は、政府発表によると、今年の総生産量は昨年に比べて約17%減少するという。

[メキシコの牛肉]
 メキシコ北部の干ばつも深刻。干ばつ地域では深刻な水不足が発生し、牛が食べる牧草がなくなり、多くの牛が死んでしまった。メキシコは世界第6位の牛肉生産国で、北部ソノラ州の牛肉は有名。しかし、干ばつにより110万頭の牛の半数近くが死んでしまったという。

(つづく)


最新のニュース一覧はこちら←

 

 

 

タグ :