連載635 山田順の「週刊:未来地図」 円安、株安、インフレが襲ってくる! 誰も止められなくなったコロナ不況と長期低迷 (中1)

連載635 山田順の「週刊:未来地図」 円安、株安、インフレが襲ってくる! 誰も止められなくなったコロナ不況と長期低迷 (中1)

岸田、高市の政策は財政無視のバラマキ

 では、残りの2人の候補はどうだろうか?  岸田文雄氏は「小泉政権以降続いてきた新自由主義を改める」と言ったが、それがなにを示しているかよくわかない。一部企業などに利益が集中して格差が拡大していることを指摘し、そのため格差是正を強く主張したので、これを改めるということのようだ。

 岸田氏は、分配を重視する「新しい日本型資本主義」を提唱した。ただ、この点も具体性に乏しく、よく聞くと地方や中間層に分配を手厚くするというので、結局はバラマキである。

 それでも岸田氏は「財政再建の旗は降ろさない」と述べたが、分配重視のバラマキ政策では借金がかさむだけだ。

 経済政策を聞いて唖然とするほかなかったのが、高市早苗氏の「サナエノミクス」である。これは、アベノミクスの継承であるうえ、それをさらに大型化したものにすぎない。つまり、極左でもやらない超大型バラマキ政策で、「大きな政府」指向だ。

 高市氏は「十分な経済対策を数十兆円規模で速やかに実施する」と述べた。また、大規模災害に備えた「危機管理投資」と、ロボットや半導体技術などへの「成長投資」で機動的な財政出動を図ることも提唱した。

 しかし、それをするためには、増税か国債増発の「財政ファイナンス」を行うほかない。そんなことをしたら財政はさらに悪化するが、彼女は「プライマリーバランスは凍結する」としたので、驚くほかなかった。

 「成長投資」とは言うが、それはケインズ的公共投資であり、GDPを引き上げる効果はあるが、それは予算執行した1年間だけの限定的なものにすぎないことが多い。その後は副作用のほうが大きい。これは経済学の常識だが、彼女は、それがわかっていないのかもしれない。「(思い切った財政出動は)雇用を生み、所得も増え、必ず税収として戻る」と力説した。本当に、そんなことがあるだろうか?

野党の政策も「大きな政府」で与党と同じ

 自民の総裁選にぶつけて、野党・立憲民主党も政策を発表した。しかし、それもまた「少なくとも30兆円規模の補正予算を編成する」というバラマキで、差別や格差是正を目指すという「大きな政府」政策だった。

 立憲民主党の枝野幸男代表(57)は、9月12日、党のインターネット番組で、近く「アベノミクスの功罪」を検証するための党組織を設置すると明らかにした。そして、「検証はわれわれが打ち出す政策の前提となる」と述べた。

 はたして、量的金融緩和の功罪をどう位置付けるのだろうか?  枝野氏は、かねてから「新自由主義的路線を菅政権は加速しようとしている」と主張し、新自由主義的な経済政策の転換の必要性を訴えてきた。その立場から、「格差是正による分厚い中間層の復活」を党の看板政策として打ち出したが、これは岸田氏の政策とほぼ同じだ。

 9月8日、立憲民主、共産、社民、れいわ新選組の4党が集まり、衆院選に向けた「野党共通政策の提言」を発表した。

 しかし、そこに盛り込まれた項目なかでは、「消費税減税」のみが、日本経済再生に貢献できる政策だった。それ以外の目玉とされる「憲法“改悪”反対」「安全保障法制の違憲部分の廃止」などは経済とは直接関係せず、「原発のない脱炭素社会の追求」(原発ゼロ)にいたっては、かえって経済の悪化を招く。

 それにしてもなぜ、この国は、与党も野党も左翼的な「大きな政府」指向なのだろうか。大きな政府ほど、自由経済を圧迫するものはない。経済回復は自律的に起こるものであり、国家が経済に手を突っ込めば突っ込むほど、経済は悪化する。国家がやるべきことは、経済の統制ではなく、規制緩和やイノベーションの手助けをすることだけだ。

(つづく)

 

この続きは10月25日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。


最新のニュース一覧はこちら←

 

 

 

タグ :  ,