連載636 山田順の「週刊:未来地図」 円安、株安、インフレが襲ってくる! 誰も止められなくなったコロナ不況と長期低迷 (中2)
(この記事の初出は9月14日)
FRBもECBも緩和縮小に方針変更
日本がコロナ対策と経済政策で迷走するなか、アメリカも欧州も、金融緩和の縮小に向けて動き出した。 FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長は、すでに、8月27日のジャクソンホール会合で、「テーパリング」(量的緩和の規模の縮小)を年内に開始するのが適切だという考えを示した。これが実施されれば、米国債などの債券買取りは減少し、金利が上がる。FRBとしては、コロナ禍からの経済回復が順調に進んでいると解釈したのである。
このFRBの公表を受けて、英イングランド銀行も緩和縮小に向けた方針を公表した。カナダ中央銀行も、同じような方針を示唆した。さらに、オーストラリア準備銀行(中央銀行)は、9月7日の理事会で資産購入の減額を決定した。
ECB(欧州中央銀行)も、9月9日、テーパリングを決め、金融正常化に向かうことを公表した。ECBは、コロナ危機に対処するため、総額1兆8500億ユーロ(約240兆円)の債券緊急買い取り制度を設け、これを少なくとも2022年3月まで続ける方針だった。しかし、景気が回復に向かっていると判断し、買取り額の減額を決めたのである。
これに対し日銀は、これまでの「異次元緩和」と併せて6月に決定したコロナ対応の資金繰り支援策を、2022年3月まで継続する方針を変更していない。じょじょに、ETFやREITなどリスク資産の購入を減らしてはいるが、当初のインフレ目標である「物価の2%上昇」に達するまで、緩和はやめないとしている。
日銀の現状維持政策では円安が加速する
このように欧米の中央銀行が金融緩和の「出口政策」に動き始めるなかで、日銀が現状維持政策を続けると、円や株価に大きな悪影響をもたらす可能性がある。まず、円は間違いなく円安に向かうだろう。ゼロ金利の円を持つ意味がなくなるから、円は売られる。
この現象はすでに起きている。たとえば、前記したようにオーストラリア準備銀行が「国債購入のペースを週40億豪ドルにする」と公表したとたん、外為市場では豪ドルが買われ、対円では1分間で20銭ほど円安・豪ドル高が進んだ。
豪ドルに対してこれだから、アメリカで本格的なテーパリングが始まれば、円安・ドル高が一気に進むだろう。
現在、外為市場では、「年内には1ドル115円まで下落するだろう」との見方が主流になっている。しかし、実際に下落するときは、そのスピードは速い。1ドル120円突破もありえるだろう。日本の景気の回復次第だが、それが遅れれば遅れるほど円安が進むと思われる。
2021年の今年、これまでの円の対ドル安値は111.66円、高値は102.59円だった。今後これがどうなるか? 円安が進めば、現在の日本経済の構造から見て、輸入品(資源、食料など)が値上がりしてデフレはインフレに変わり、そのインフレはじょじょに高じていくだろう。場合によっては、インフレは制御できなくなる可能性もある。
(つづく)
この続きは10月26日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
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