連載640 山田順の「週刊:未来地図」 誰が新首相でも日本の将来は変わらない 人口減少社会の恐ろしさ (中)
(この記事の初出は9月28日)
バラマキで票を買うポピュリズム
自民党総裁候補4人の政策も、野党の政策も、ひと言で言ってしまえば「バラマキ」である。財源が税金か国債なら、それは誰かから奪ったおカネでほかの誰かを助けると言っているにすぎない。
つまり、おカネで票を買うポピュリズムで、そのおカネは他人のおカネだから、ほとんど詐欺だ。
高市氏は、自身が尊敬しているというサッチャー元首相の言葉「金持ちを貧乏にしても、貧乏人は金持ちにはならない」を何度も引用しているが、その意味をわかっているのだろうか。
持っている者から富を取り上げて、それを持たざる者に配っても、経済は成長しない。国は豊かにならない。分厚い中間層などできない。
いずれにしても、財政出動や減税を主張するなら、それが時限的措置であっても、財源を提示して政策を議論すべきだ。そうでなければ、誰でも「私ならこうします」と言える。それはあまりにも無責任であり、最終的に国民を苦しめる。
財政出動は必要だがバラマキは効果なし
「失われた30年」のうえに「コロナ禍」が続く現在の日本では、財政出動は必要だ。たしかに、これまで以上に財政出動をするべきだ。そうして、なんとか経済を下支えしなければ、日本の衰退は止まらない。
しかし、それがバラマキであってはならない。経済を成長させ、企業活動から個人消費にいたるまで経済を活性化させるものでなければならない。いわゆる生産的な政府支出を拡大させ、研究・技術開発、人材育成などに予算を効率的に振り向けることが必要だ。昨年、鳴り物入りで行われたアベノマスク配布のような政府支出はバラマキであり、税金の無駄遣いの典型だ。
すでにケインズ経済学に由来するバラマキ型の財政出動は、どこの国でも否定されている。日本は、バブル崩壊後の1990年代に大規模な財政出動による公共事業を行い、ことごとく失敗してきた。デフレ脱却という名目で、総需要喚起のためのバラマキも行われたが、政府債務が積み上がっただけで、ほとんど効果がなかった。
「積極財政」を行っても貯蓄が増えるだけ
バブル崩壊以後の1990年代、日本政府は何度も税率を下げ、金利も下げ、量的な景気刺激策も行なった。しかし、いずれも経済成長にはつながらなかった。
もちろん、財政出動をした年だけを見ればGDPは増えた。しかし、それは単年度だけの話で、持続的な経済成長は起こらず、1人あたりの国民所得、給料はまったく増えなかった。
それでも、いわゆるリフレ派と言われる人々は、緊縮財政をやり玉にあげ、「もっと積極財政をせよ」と言い続けている。政府が財政出動を積極的に行えば、総需要が回復してデフレが解消される。その結果、企業の投資は活発になり、賃上げも行われると言うのだ。どこまでも「お花畑思考」と言うほかない。
財政出動の財源は、増税か国債発行しかない。このうち、増税は間違いなく消費を減退させる。また、国債発行で資金を調達し、これを社会保障費、各種の給付金などに充てれば、企業や家計は一時的に手元におカネを残すことができる。しかし、このおカネは消費には回らない。将来的に必ず増税があるのがわかっているので、企業や家計はその負担に備えて貯蓄を増すだけだからだ。
(つづく)
この続きは11月1日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
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