連載644 山田順の「週刊:未来地図」 中国の「第二文革」による経済失速が日本を直撃。 インフレ大転換で生活崩壊! (中1)

連載644 山田順の「週刊:未来地図」 中国の「第二文革」による経済失速が日本を直撃。
インフレ大転換で生活崩壊! (中1)

 

富をため込んだ大企業を粛清・国有化

 習近平政権は、昨年11月、アリババ傘下のアントグループが計画した株式公開を延期させた。そして、今年になると、テンセントや配車サービス大手の滴滴出行(ディディ)などに対する統制を強化した。
北京は、これらの大企業に言いがかりをつけ、経営者を弾圧し、共産党に対する忠誠を要求した。つまり、企業の国営化である。

 そのため、アリババは、北京の要求に応えるために、2025年までに日本円で1兆7000億円を投入する方針を示した。また、テンセントは、低所得層に対する支援に日本円で8500億円を拠出することを表明した。

 すでに知られているように、習近平は、8月17日の演説で「共同富裕」を打ち出した。これは、貧富の格差を是正するということで、高所得者の「不法収入に対する取り締まり」を強化し、「不合理収入」に対する「整理・規制」を行うことを意味した。

 つまり、富める企業、富める者から取り上げた富を貧しい者に分け与える(=「劫富済貧」)。そうすることで、毛沢東時代の共産主義革命路線を復活させ、新中国をつくるというのである。

 習近平は、鄧小平以来の「先富論」を否定し、「第二文革」を始めたのである。文革では、ブルジョワジーが粛清された。それと同じく、第二文革では、企業経営者や富裕層がターゲットにされる。

芸能人の粛清、思想統制、教育の弾圧

 「共同富裕」演説と前後して、中国では著名芸能人に対する粛清が始まった。芸能人も富裕層であり、非常にわかりやすいターゲットだからだ。

 まず、人気俳優の張哲瀚(チャン・ジャーハン)が数年前に靖国神社で写真を撮ったという過去の「罪状」を暴露され、ブランドとの契約をうち切らされたうえ、撮影中の作品からも降板させられた。事実上の芸能界追放である。

 さらに、人気女優・鄭爽(ジェン・シュアン)の巨額脱税が摘発され、50億円の罰金を課されるとともに、芸能界から追放された。

 芸能界追放はこの2人に止まらず、中国最大のビッグスターと言ってもいい女優の趙薇(ヴィッキー・チャオ)にも及んだ。彼女は、SNSも含めてあらゆるメディアから消されてしまった。

 芸能人の粛清とともに、思想の統制、教育の弾圧も始まった。8月27日に、ネット規制を主管する国家インターネット情報局(CAC)が出した通達によると、ネット上で「中国経済衰退論を唱えたり、海外の中国経済論評を無批判に流布したりする行為」は、今後は取締りの対象になるとされた。

 教育現場では、たとえば上海市教育委員会は、市内小中学校の必修科目に「習近平思想」を加え、その一方で小学校の期末試験の教科から英語を外した。

 また、中国政府は、「学習塾禁止令」を出し、全国各地で学習塾を閉鎖させた。北京が打ち出した教育政策は「双減」と呼ばれ、双減、つまり2つを減らすということで、その2つとは学習塾と宿題だった。

 このような社会の統制をすれば、それは当然のこととして、経済にも及ぶ。人々の経済活動は制限され、経済は停滞する。しかし、北京は、そんなことは意にも介さないようだ。 

(つづく)

 

この続きは11月5日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

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