連載652 山田順の「週刊:未来地図」 ついにスタグフレーションに突入:貯金、現金の価値低下でなにが起こるのか? (下)
誰も経験したことがない金融緩和バブル
日銀に限らず、中央銀行の金融緩和バブルをどうやって収束させるのかは、誰にもわからない。これまで誰も金融緩和バブルを経験したことがないのだから、わからないとしか言いようがない。しかも、通貨が金(ゴールド)の裏付けを失って際限なく発行でき、さらに、国際為替が変動相場制になってから、まだ半世紀しかたっていない。
それなのに、経済学者から経済評論家、金融アドバイザーまで、いろいろなことを言っている。資産防衛を説く専門家はなにを持ってそう言っているだろうか。
ともかく、誰も信用できない。当たるも八卦、当たらないも八卦である。
現在のところわかっていることが一つだけある。
それは、日銀の黒田総裁の任期が2023年4月8日まで続くということだ。安倍内閣、菅内閣、岸田内閣と内閣は3つ変わったが、黒田総裁は「通貨の番人」であり続けている。しかし、彼が日本国民の資産を守ってくれるかどうかは、まったくわからない。
金融緩和を止めたとき株価はどうなる?
では、ここから、株価、金(ゴールド)、不動産の順に、当たるも八卦、当たらないも八卦で、スタグレフレーション下でどうしたらいいのか考えてみよう。
株の場合、多くの投資家がインフレ対策の長期投資として買っている。経済学の教科書から言えば、「インフレになると株高」は正しいから、この行動は間違っていない。
しかし、現在の世界的な株高は金融緩和によって引き起こされたバブルである。となれば、この先、金融緩和が引き締め(テーパリング)に入れば、株価は下がると見ていい。現在、大方の市場関係者はそう見ていて、NYダウがいっとき3万5000ドル、日経平均が3万円を超えてから「高所恐怖症」に陥っている。
しかし、誰もが買っている以上、買うほかないようだ。
金利が上がると、一般的には景気がいいからだと判断されて、株価は上がる。ただし、一部の資金はリスク選好から債券に移動する。しかし、これはあくまで一般論。金融バブル下で通用するかはわからない。
前記したように、日銀の場合、インフレになったら金利を上昇させるというセオリー通りの行動を取るかどうかはわからない。
なにより、日銀はいまや日本株の最大の保有者だからだ。
(つづく)
この続きは11月17日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。