連載654 教育を変えられない絶望ニッポン もはや若者はこの国を捨てるほかないのか? (上)

連載654 教育を変えられない絶望ニッポン もはや若者はこの国を捨てるほかないのか? (上)

 総選挙の投票を前に思うのは、いくら選挙に行って投票しても、日本は変わらないということ。政権が交代しようと、政治家が刷新されようと、無理である。教育が変わらないからだ。
 日本を変えるなら、日本人そのものを変えねばならない。それができるのは、教育だけなのに、政治家たちは「すべての子どもに10万円支給」「高校までの教育無償化」「国公立大学の学費免除」「給付型奨学金の充実」など、教育現場にカネをばらまくことしか考えていない。
 もう若者は、こんな日本で教育を受けるべきではないだろう。そうすればそうするほど将来はなくなり、貧しくなる一方だ。

 

公明党の子どもに10万円支給公約が炎上

 すでにご存知の方が多いと思うが、公明党が打ち出した「0~18歳のすべての子どもに1人当たり10万円相当を支給する」という公約が、ネットを中心に叩かれ炎上している。公明党は、「未来応援給付」と銘打ち、子育て支援を強くアピールしているが、はたしてこれが、本当に教育支援になるのかと疑問噴出である。

 公明党は、10万円給付以外に、出産育児一時金の増額や、0~2歳児の保育料無償化、段階的な高等教育無償化も打ち出した。さらに、公約には「子ども家庭庁(仮称)」の創設と「子ども基本法」の制定を明記し、山口那津男代表は記者会見で「未来の世代をしっかり育てていくことが、社会の希望と安定につながる」と強調した。

 しかし、これらの政策のどれもが、単なるバラマキにすぎない。本当に、日本の未来をつくる子どもたちのことを思っているとは、とても思えない。

 単純に考えても、子どものいる家庭に教育費の支援として現金を配ることで、教育がよくなるわけがない。また、子どもの教育費の足しにとおカネを配っても、親におカネを渡すわけだから、そのおカネがなにに使われるかはわからない。

 このように考えれば、こうした公約は、単に選挙目当ての一時的なもの。カネで票を買うポピュリズムにすぎないとわかる。ところが、こうした公約は、公明党ばかりか、自民党はもとより立憲民主党などの野党も、みな同じだから始末が悪い。日本の政治家は、教育のことなどまともに考えていないようである。

どの政党も同じような政策のオンパレード

 以下、これまでの発表および各党のサイトなどから、政党別の「教育政策」(選挙公約)をまとめてみた。

自民党
・「こどもまんなか基本法(仮称)」を制定し、「こどもまんなか支援事業(仮称)」を推進。「こども庁」を創設。
・10兆円規模の大学ファンドを22年度までに実現する困窮子育て世帯給付金の支給。
・児童手当の低・中所得層増額
・高所得層の児童手当の復活(菅政権のもとで待機児童対策のために来年秋に廃止決定)
・幼児教育の無償化の0-2歳適用(保育料無償化)
・高校無償化の所得制限の緩和(現行制度:私立高校年収590万円、公立高校年収910万円からの引き上げ)

公明党
・「こども家庭庁(仮称)」を創設する。
・「未来応援給付」として0~18歳までのすべての子どもに対し、一人一律10万円相当を支給する。

日本維新の会
・幼稚園・保育園を含むすべての教育を無償化する。
・教育予算の対GDP比を他の先進国並みに引き上げる。

立憲民主党
・児童手当の所得制限の撤廃と高校卒業年次までの延長。

・義務教育の学校給食の無償化、
・中学校の35人以下学級、
・高校授業料無償化の所得制限の撤廃をし、将来的に「子ども省」を創設する。
・国公立大学の授業料に半額まで引き下げる。

日本共産党
・大学・短大・専門学校の学費すみやかに半額に引き下げ。
・私立高校の負担軽減、高校教育の無償化。
・学校給食の無償化。

国民民主党
・義務教育を3歳からにし、高校までの教育無償化を実現。
・大学の授業料を減免。給付型奨学金の拡充を図る。
・児童手当支給を18歳まで延長し、額も一律で月1万5000円に拡大。

社会民主党
・「子どもの権利基本法」を制定し「子ども家族庁」を設置。
・給付型奨学金の規模を拡大。
・高等教育の段階的な無償化を目指す。

れいわ新撰組
・奨学金の返済を免除する「奨学金徳政令」を実施。
・教育を完全無償化する。

 各党の教育政策を見比べて驚くのは、どれも似たり寄ったりということだ。それも、教育の中身にふれたものはない。ただただ、援助する、補助する、免除するなどといった、おカネを支援するものばかりだ。
 つまり、教育政策と言っても、それは「貧困対策」にすぎない。子育てにかかる教育費の負担を減らしてあげますよと、政治家たちは言っているだけだ。

(つづく)

 

この続きは11月19日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

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