連載667 「新しい資本主義」は看板だけ、 そもそも日本は自由な資本主義国ですらない (完)
今後、どんな増税が計画されているか?
以下、今後、導入が検討されている課税を列記してみたい。
まずは、前記したように所得税などに上乗せされる「コロナ特別税」。いったんは引っ込められた「金融所得課税」。これがうまくいかなければ、金融取引そのものに課税してしまう「金融取引税」などがある。さらに、格差是正の声が高まれば、富裕層から資産を奪う「資産税」もありえる。
そして、今後、確実なのが、「炭素税」である。
菅前政権は温室効果ガスの排出量を「2030年度までに13年度比46%減」を国際公約にしてしまった。それにともない、日本に求められているのは石炭火力発電を廃止したうえでのクリーンエネルギーへの転換である。
となると、その莫大なコストを捻出するために、二酸化炭素の排出量に応じて課税する「炭素税」が必要になる。
そうして、最終的に予想されるのが、「インフレ税」だ。これは税金ではないが、税金よりタチが悪く、国民生活を破壊する。
インフレ税とは、量的緩和の行き過ぎの結果起こるインフレで、おカネの価値が下がり、税金と同じような効果をもたらすこと。つまり、インフレで物価が2%上がれば、おカネの価値が2%下がったことになり、これは、2%の税金を取られたのと同じというわけである。
若者は当たり前の人生ができなくなった
日本が新自由主義経済をやっていたら、少なくとも、ここまで経済は停滞しなかっただろう。いくら人口減による人口オーナス期になってしまったとはいえ、自由な市場があれば、人々は知恵をしぼり、才覚を磨き、経済を発展させたはずだ。
ところが、日本政府は、経済政策を履き違え、社会主義国と同じような政策をとり続けてきた。そしていま、それをさらに「分配」と「バラマキ」で強化しようとしている。公明党が出した「18歳以下一律10万円支給」などという「愚策」を、マジメに議論しているのである。
いまや、若い世代はいくら努力しても、所得を増やして豊かになることが不可能になっている。まず、給料が上がらない。なんとか貯金できてもゼロ金利で増えない。投資しても、日本の投資環境は圧倒的に悪い。そして、そのうえに増税である。
就職して働き、やがて結婚して家庭をつくり、子供を育てる。そういう当たり前の人生ができなくなっている。
政府がすべきは仕事とチャンスをつくること
政府がやらなければならないのは、「分配」ではない。まして、「バラマキ」では絶対にない。困窮者に補助金、給付金という名目でおカネを配っても、それは一過性に過ぎず、それがなくなれば困窮者はまた困窮する。
おカネを配るより、おカネを稼げるように、仕事をつくり、チャンスをつくることが、本来政府がやるべきことだ。そうしなければ、いま流行りの言葉「SDGs」(持続性)は達成できない。
税金が高く、規制が多く、政府と一部の企業、資本家が結びついているほど、国民は不自由を強いられ、経済は疲弊する。日本が市場原理が働く自由市場というのはウソであり、OECDのデータによると、日本の規制の多さは欧米諸国の比ではない。日本は規制が多く、税金が多くて高い「大きな政府」の国である。
この現実をいまの政府は変える気はまったくない。
そのなかで、「自滅政策」としか思えない「新しい資本主義」をやると、岸田首相は言っているのだ。本当にこのままでは、日本には“絶望未来”しかない。
若者はできるなら、できるだけ早くこの国を出て、別の世界で生きるべきだろう。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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