連載673 やがて世界経済の成長は止まる! 早まる人口減で2050年から投資環境は激変(完)

連載673 やがて世界経済の成長は止まる! 早まる人口減で2050年から投資環境は激変(完)

 

少子化対策、人口増政策はことごとく失敗

 このように、世界人口の推移を振り返れば、これが経済発展とパラレルなのがわかる。科学、技術、医学などが発展し、食糧生産が飛躍的に増えるのと並行して世界人口は増え続けた。これを逆から言えば、人口が増えなければ、経済はスローダウンするということだ。

 すでに、少子化に見舞われた国々では、将来の人口減を見越して、あらゆる少子化対策、人口増加政策を導入して、人口が減ることを阻止しようとしてきた。手厚い出産手当、児童手当、育児休業制度、保育サービスの拡充などが少子化対策の柱だが、これまでに画期的な成功例はない。

 欧州では、フランス、スウェーデンが出生率引き上げの成功例とされるが、それでも1.90までが精一杯で人口維持に必要とされる2.1に達していない。

 シンガポールは、アジアの国のなかで世界に先駆けて少子化対策に取り組んだが、世界最低水準の1.14まで落ちてしまった。

 そのため、イギリス、ドイツ、フランスなどの欧州諸国が進めたのが、積極的な移民受け入れである。とくにイギリスは、旧植民地中心の移民受け入れで人口減を防いできた。しかし、その反動から、国民投票による「ブレグジット」が成立し、EU離脱となってしまった。

 ドイツは、生活保護を受ける移民の増加、 移民男性による犯罪の多発などに苦しむことになった。

移民受け入れもやがて限界が来る

 それでも人口減少を解決する方法として、移民導入がいちばんであることは間違いない。どうやっても、少子化が止まらないのだから、移民に来てもらい、経済レベルが落ちるのを防ぐほかない。

 しかし、移民を受け入れるためには、国のあり方を変えなければならない。

 カナダがそのいい例である。カナダと言えば、「多文化主義」(multiculturalism)の国として知られるが、この多文化主義によりカナダは移民によるモザイク社会、多言語社会ができあがってしまった。

 いまや、バンクーバーやトロントに行けば、あらゆる人種に出会う。ニューヨーク以上の「人種の坩堝(るつぼ)」である。

 多文化主義においては、移民はそれぞれの出生地の文化を尊重する権利を共有することになる。カナダは、多文化主義導入で成功した稀有な国である。カナダ経済は成長を続け、国自体も平和で繁栄を続けている。

 移民が国家の繁栄をもたらすことは、アメリカにも言えることだ。20世紀が“アメリカの世紀”だったのは、移民政策のおかげだ。今後も移民の流入が続くなら、21世紀もまたアメリカの世紀となるのは間違いない。

 しかし、トランプ前大統領の出現以来、アメリカの移民政策は曲がり角に来ている。不法移民の激増に、元からの住民の怒り、不満が爆発した。

 つまり、元からの住民にとって、多文化主義、多言語モザイク社会は受け入れがたいのである。

 そして、この移民導入政策には、最終的に大きな壁が待ち構えている。

 それは、世界中の国が人口減に転じてしまえば、そもそもの移民がいなくなってしまうということだ。経済格差からの移民は続くかもしれないが、いずれ途上国は消滅し、人口増加から人口減に転じるのである。

 こうなると、先進国は移民の奪い合いをすることになるが、はたしてそんな時代がやってくるのだろうか?

少子高齢化先進国、日本の未来はどうなる?

 わが国は、世界に先駆けて高齢国家となり、少子化、人口減に見舞われている。いまや、1年で40~50万人の日本人が消滅している。国立社会保障・人口問題研究所によれば、今後もこのペースで人口減が続けば、2100年の日本人は、現在の半分以下である人口5972万人にまで減ってしまう。

 しかし、いまのところ、日本に人口減を止める手立てはない。日本人の国民性から見て、大量の移民を受け入れることはありえないし、この国の文化を多文化主義に変えてしまうなどの大冒険をするとも思えない。

 人口減による経済衰退を「借金財政」によって下支えし、ずるずると衰退していく未来しか見えてこない。そのため、先見の明と能力があり、有為の人間から、この国を出ていくだろう。

 トランプが去ったアメリカは、いままた、1人1人の国民が選択を迫られている。多文化主義、モザイク社会を受け入れ、来るものを拒まず、「開かれた国」を望むのか、それとも国境の壁を築き、「アメリカ・ファースト」と言って衰退する道を望むのか。

 じつは、日本もそうした岐路に立っているのだが、それを自覚している国民はほとんどいない。

 日本の歴史を紐解くと、過去に人口減少期は3度あった。最初は縄文時代の中後期。2回目は、平安時代後期から鎌倉時代にかけて。そして、3回目は江戸中期から後期にかけてである。そのいずれのときも、日本は内にこもり、経済は成長していない。
 現状を見れば、この歴史が繰り返すのは間違いないだろう。

(了)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

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