連載682  日本と同じ道を歩むのか? 人口減少で中国の「失われる10年」が始まった!(中)

連載682  日本と同じ道を歩むのか?
人口減少で中国の「失われる10年」が始まった!(中)

 

国家資本主義を捨て社会主義に回帰

 習近平主席が、8月に「共同富裕」というスローガンを公表し、それ以前から、さまざまな規制強化が進められてきたことは、いまさら改めて書くまでもないだろう。 
 「共同富裕」とは、字義的にはみんなで豊かになることだが、経済面から言うと、富裕層の富を取り上げて、それを貧しい層に配って格差を縮小させることだから、「みんなで貧しくなる」ことを意味する。
 成長より、分配重視だから、明らかな社会主義への回帰である。習近平政権は、資本主義の行き過ぎを中国から一掃することを始めたのである。
 その皮切りは、昨年、アリババ・グループの傘下にある「アント・グループ」の新規株式公開(IPO)を阻止したことだった。また、今年の6月、中国政府は突如として、配車サービス最大手の「滴滴」(ディディ)の新規の利用者登録を中止させた。これにより、NY市場に上場したばかりだったディディ株は暴落した。
 企業に対する規制強化ばかりではない。中国政府は、芸能人やネットのインフルエンサーの脱税を摘発して社会から追放したり、学習塾を強制的に閉鎖したりするなどの措置を強行した。
最近では、「“いびつな美意識“の助長を禁止する」として、芸能界への規制を強化している。
 つまり、中国は、国家が経済ばかりか、価値観、文化まで規制し出したのである。なにが公正か、なにが贅沢か、そしてなにが美しいか、なにが健全でなにが低俗かなど、すべて国家が決めるのだ。
 これだと、自由な経済活動をベースにする資本主義は成り立たず、経済は成長しない。

2050年、中国の人口はいまの半分になる

 いったいなぜ中国は、これまでと違う方向に舵を切ったのか?
 その背景にあるのが、人口問題ではないかという指摘がある。私も、現在、そう思っている。人口の増減と経済成長はリンクしており、人口が増えれば経済は成長する。これを「人口ボーナス」と呼んでいる。
 その逆で、人口が減れば経済は衰退し、これを「人口オーナス」と呼んでいる。
 これまでの中国経済は、人口増に支えられ、人口ボーナスのおかげで大発展してきた。しかし、この人口ボーナスがもう続かないところに差しかかっている。世界一の中国の人口が減少に転じるのはかなり先のことと思われてきたが、じつは、コロナ禍もあって、もう始まった可能性が高いのである。
 この10月1日、中国西安交通大学の研究チームが、衝撃的な発表を行った。それによると、「現在の出生率が持続する場合、45年後には中国の人口は現在の半分の水準の7億人にまで減少する」というのだ。
 国連が公表している「世界人口の推計」によれば、中国は2065年まで13億人の人口を維持するとされている。これは、これは合計特殊出生率(出生率)を1.7と仮定した場合である。
 しかし、西安交通大学の研究チームは、現在の出生率である1.3をベースにして45年後(2066年)の半減を推計した。さらに、出生率が1.0まで低下すると仮定した推計もあり、それによると中国の人口が半分になる時期は2050年としている。
 あと30年で人口が半減してしまう。そんなことがはたして起こるのか? 起こるとしたら、中国の人口はもう減り始めているか、いますぐにでも減り始めるということになる。

(つづき)

 

この続きは1月12日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

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