連載683 日本と同じ道を歩むのか?
人口減少で中国の「失われる10年」が始まった!(下)
出生率1.3で人口のピークはもう来ている
中国政府は、今年の5月に、2020年に実施された「全国人口センサス」(日本の国勢調査に相当)の結果を発表した。
それによると、2020年の中国の総人口は14億1178万人で、前回調査の2010年の13億3972万人と比べて、7206万人増えていた(5.4%増)。2020年までの10年間の年平均伸び率は0.53%で、2010年までの10年間の0.57%を若干下回った。
中国では、「一人っ子政策」が段階的に緩和され、2016年からは「二人っ子政策」が全面的に実施されるようになった。これを受けて、新生児の数は2016年には約1800万人、2017年には約1700万人を超え、以前と比べて、それぞれ約200万人、約100万人増えた。
ところが、2018年以降再び減少に転じ、コロナ禍も影響して2020年には、なんと約1200万人に減ってしまった。出生率も低下し、2020年には1.3と、長期的に人口を一定のレベルに維持するための人口置換水準を大きく下回ってしまった。
前記したように、国連の「世界人口の推計」では、中国の人口のピークを、中位推計で2031年、低位推計で2024年としていたが、前者は出生率を1.7、後者は1.4として推計していた。しかし、すでに1.3まで低下しているので、コロナ禍を考慮すれば、いまがピークかもしれないのである。
中国政府は約1億人水増ししている?
人口減に転じたからといって、すぐに経済成長が止まるわけではない。重要なのは、生産年齢人口(15~64歳)の増減だ。この人口が減少に転じたとき、人口ボーナス期は終わり、経済は縮小を始める。
実際のところ、中国の生産年齢人口は減少してきている。
前述の「全人口センサス」によると、2020年の0~14歳の年少人口は2億5338万人(総人口の17.9%)、15~59歳(中国の場合64歳ではなく59歳)の生産年齢人口は8億9438万人(同63.4%)、60歳以上の老年人口は2億6402万人(同18.7%)である。
ちなみに、老年人口のうち、65歳以上の人口は1億9064万人で、高齢化率は13.5%。日本が28%に達しているのと比べると、まだ前期高齢社会と言える。しかし、生産年齢人口が10年間で4524万人減っていることは、経済にとって大きなダメージだ。
「一人っ子政策」の廃止を受けて出生率は一時的に上昇したが、それも2年で低下。このままでは、生産年齢人口の減少は避けられない。
「中国政府が公表している出生率は実態よりも高すぎる」と公言する専門家もいる。彼らは、北京の発表は信じられるものではなく、中国の実際の人口は約1億人多く水増しされているという。
となると、政府発表の約14億人ではなく、約13億人が現在の本当の人口となり、生産年齢人口の約9億人ももっと少なくなる。
すでに、中国は人口ボーナス期が過ぎていて、GDPも水増しされている可能性は否めない。
(つづき)
この続きは1月13日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。