連載690  中国経済の失速が日本を直撃、このままでは私たちの暮らしは窮地に!(中1)

連載690  中国経済の失速が日本を直撃、このままでは私たちの暮らしは窮地に!(中1)

(この記事の初出は2021年12月21日)

 

「2028年、米中逆転」は遠のいた

 これまでは、中国経済の順調な発展ぶりから、多くのアナリストが次のような予測を立てていた。
 中国経済は、2020年代前半は実質成長率で5%台を維持し、2025年前後からに5%を割る。その後、2020年代後半に成長率が鈍化して、2030年代になると3%前後の成長率で推移する。
 しかし、来年にも5%を割り込めば、この絵図は崩れる。(注:中国は2020年に成長率2.3%を記録している。これはコロナ禍によるもので例外とする)
 さらに、これまで当然とされていた「米中逆転」(中国がアメリカのGDPを上回る)は、遠のくとの見方が出てきた。昨年の12月、英国のシンクタンクの「経済ビジネス・リサーチ・センター」(CEBR)」は、年次報告書で、新型コロナのパンデミックが各国の経済に悪影響を与えたため、中国が当初予測よりも5年早くアメリカを抜くという予測を発表していた。
 しかし、この見方はとんだ見当違いに終わりそうだ。
「米中逆転」に関しては、古くはゴールドマン・サックスが、近年ではWTOなどの国際機関なども予測してきた。しかし、私は中国経済がアメリカを上回り、世界の覇権を握ることはありえないとしてきた、実際、これまでの本、記事でそういう見方を通してきた。
 もし、米中逆転が起こるなら、2030年代前半とされるそのときの各国の順位(GDP)は、次のようになるという。
 1位 中国、2位 アメリカ、3位 インド、4位 ドイツ、5位 ブラジル、6位 日本、7位 フランス、8位イギリス、9位インドネシア、10位 韓国
 日本がトップ5から転落するのは自明だが、中国の1位はありえないと思う。

デカップリングがじわじわと効いてきた

 ではなぜ、中国経済は減速してきたのか? そのことを分析してみたい。コロナ禍のせいとするのはあまりに単純な見方で、中国減速の原因はさまざまな要素が絡み合って起こった。
 まず挙げられるのは、米中新冷戦による「中国デカップリング」が始まったことだ。トランプ前大統領によって貿易戦争が開始され、中国をサプライチェーンから外す動きが起こった。
 中国経済の黄金期は「世界の工場」として、モノを大量に輸出することで成立した。しかし、いまでは、中国以外の選択肢「チャイナプラスワン」から「ゼロチャイナ」(脱中国)までができて、多くの企業がシフトし始めている。
 ただし、本当に中国をデカップリングしてしまうと、いまの世界経済は成り立たなくなる。単純な話、アップルはアイフォンをつくれないし、テスラはEVをつくれない。本格的なデカップリングをすれば各国は共倒れになってしまうのだ。
 そこで、デカップリングはじょじょに進み、ここにきて中国にじわじわと効いてきたと言っていい。
 中国デカップリングの鍵を握るのが半導体で、「中国製造2025」により、世界の半導体製造に必死に追いつこうとする中国の半導体産業、ITインフラ産業を潰すことがアメリカのいまの狙いである。
(つづく)

 

この続きは1月25日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

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