連載693 中国経済の失速が日本を直撃、このままでは私たちの暮らしは窮地に!(完)
(この記事の初出は2021年12月21日)
日本企業は中国なしではサバイバルできない
日本では、アメリカが北京五輪の外交ボイコットに入ったため、その尻馬に乗って日本もやるべきだと、右派、保守派の鼻息が荒い。しかし、それをすれば、日本はアメリカと違って必ず中国から報復されるだろう。
彼らはそれを承知のうえで主張しているとは到底思えない。人権、自由、民主主義外交を行えるほど、日本は国力がある国ではない。
なによりも、日本経済は中国依存が大きすぎる。中国経済の減速をもっとも大きく受けるのは、わが国である。
日本にとって中国は、2007年以降、輸出入総額でトップを占め続けている。日本企業で、中国依存度が5割を超えている大企業は20社に余るのだ。
ユニクロを展開するファースリテイリングは、全売り上げの2割超、日立製作所やソニーなどの電機メーカーも売り上げの約1割は中国が占めている。生産基地としての中国の役割も大きいが、市場としての中国の役割はもはや無視できない状況になっている。
日本企業は、いまや中国の製造業向けの部品供給でサバイバルしていて、自動車とIT関連の部品の売り上げは、中国市場が圧倒的なのである。村田製作所はその筆頭だ。また、ファナックのような製造用のロボットを扱っている企業も中国における需要が圧倒的に高い。
日本のロボットメーカーの業績は、中国抜きには成り立たないのだ。
中国発のインフレが日本を巻き込む
9月配信の私のメルマガ『中国の「第二文革」による経済失速が日本を直撃。インフレ大転換で生活崩壊!』で述べたことが、いまや現実化してきた。
中国では経済減速とともにインフレが進行し、その影響が日本に及んでいる。
中国はいまも世界中から資源や穀物を買い漁り、資源価格や穀物価格を高騰させている。ここのところ、「脱炭素」に本腰を入れ始めたため、とりあえずの代替エネルギーとしてLNG(液化天然ガス)を買い漁っているので、日本は買い負けるようになった。
現在、一時的に円安は止まっているが、今後、「悪い円安」が進むのは間違いない。となると、日本ではあらゆる物価が上がり、不況下のインフレ(スタグフレーション)になるだろう。物価は上がっても、給料は上がらないので生活は困窮する。
日銀は物価上昇率2%を目標として、量的緩和を行ってきた。その目標の達成は、いまや目前である。相変わらず、消費者物価指数(CPI)はゼロ近辺にあるが、これは組み込まれた品目のいたずらだ。なぜなら、携帯電話料金の値下げの影響が大きすぎるからだ。そこで、これを取り除くと、すでにCPIは前年同月比で1%台半ばを超えている。
コロナ感染の拡大がなぜか日本だけスルーし、新年を前にして街は活気付いているように見える。しかし、それは、見かけだけだ。もはや、日本のどこにもデフレはない。
2022年は値上げラッシュが家庭を直撃
いまの日本は、まさに値上げ、値上げの連続だ。ここのところ、毎日のように、値上げの発表がある。それを、「東洋経済」が『もはや「値上げ祭り」日本の激安生活が終わる日 節約の味方まで値上げ、どう対抗するべきか』(松崎のり子 : 消費経済ジャーナリスト)という記事でまとめているので、以下、それを引用して、今回のメルマガを終わりにしたい。
《2022年、年明け以降に予定されている食品値上げ》
食パン・菓子パン…1月から山崎製パンは食パンを平均9%、菓子パンを平均6.8%。敷島製パンも一部商品を約4~14%、フジパンも食パン、菓子パン、総菜パンなどを平均8%値上げ。
パスタ…2月からニップンがパスタ・パスタソース約2.0~9.5%、乾麺約1.5~5.5%、日清フーズがパスタ、パスタソース製品約3~9%値上げ。
冷凍食品…2月から味の素冷凍食品がハンバーグ類・チキンの香り揚げなど18品(容量改定含む)を約 4~13%、ニッスイはたこやきやちくわの磯辺揚げなど家庭用冷凍食品63品を約4~13%、日清フーズは約4~7%、マルハニチロも調理品で約2%~10%の値上げ。
ちくわ・かにかま…2月からニッスイは家庭用すり身製品50品を約5~13%の値上げ。フィッシュソーセージやチーズかまぼこも含まれる。紀文も2月28日から魚肉練り製品を平均約 8%値上げ。
ハム・ソーセージ…2月から日本ハムが5%~12%(業務用食品なども含む)値上げ。
醤油…2月からキッコーマンは対象商品を約4~10%値上げ。
コーヒー…1月からネスレ日本は「ネスカフェ?エクセラ」などレギュラーソリュブルコーヒー製品を約 10~17%などの値上げ。
ジャム…2月からアヲハタがジャム及びホイップなどを約10~23円値上げ。
マヨネーズ…3月から味の素が家庭用マヨネーズおよびマヨネーズタイプ製品を約3~9%、キユーピーもマヨネーズなどを値上げ。
ポテトチップス:1月31日から順次、カルビーは7~10%の値上げや容量変更。2月から4月にかけて、湖池屋はポテトチップスを6~11%程度値上げや容量変更。
飲料用の紙パック:4月から日本製紙が牛乳・清涼飲料向け液体用紙容器の価格を引き上げ。各飲料の価格への影響はまだ未定。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。