連載694 地球温暖化の不都合な真実(1) 長期的に見れば「氷期」に向かっているのか? (上)
(この記事の初出は2021年12月21日)
年が明けて2022年を迎えたが、今年の冬は格別に寒い。そのため、いま世界が直面している「地球温暖化」(global warning)が嘘のように思えてくる。欧米と比べたら、日本人の危機意識は低い。この国には、欧米のような過激な環境アクティビストがいないことも影響しているのだろうか。
私も、そんな危機意識が低い人間の一人だ。
これまで私は、さまざまな温暖化に関する学説、論評、報道に接してきたが、「脱炭素」(carbon neutral)政策で温暖化を防ぐことに対しては懐疑的である。それに、長期的に見ると、地球は10万年周期の「氷期」(glacial period)に向かっているという説もあり、そうした見方のほうに興味がある。
そんなこともあり、地球温暖化をどう捉えればいいのか、現在、人類が直面している最大の課題を考えてみることにした。*年頭にあたって「地球温暖化」を、3回にわたって特集配信します。お付き合いください。
南極の「終末の氷河」の溶解が早まる
年末に「地球温暖化」(global warning)を警告する大きなニュースがあった。それは、「南極のスウェイツ氷河が危ない」というもので、氷河を守っている棚氷が5年以内に崩壊の可能性があり、そうなると氷河が溶けて世界の海面を2フィート(約60cm)上昇させるというのだ。
この見解を示したのは、オレゴン州立大学の氷河学者エリン・ペティット博士。博士は12月13日に行われたアメリカ地球物理学連合の会議の記者会見で、そのように語った。
スウェイツ氷河は、別名「終末の氷河」(doomsday glacier)と呼ばれ、アメリカのフロリダ州と同じ大きさ。すでに一部は溶け出しているが、大部分は棚氷がダムのようなって暖かい海水から守られているので、それほど懸念されていなかった。しかし、棚氷のひび割れが、確実に広がっているというのだ。
ペティット博士とその研究チームは、ここ何年も衛星画像による観察を続けてきたが、最近は、「新しい衛星画像を見るたびに、亀裂が深く、長くなっているのがわかり不安が増す」と言うのだ。
海水面の上昇で砂浜は消滅し都市は水没
温暖化による気温上昇が極地の氷を溶かし、海水面を上昇させることはよく知られている。ただし、北極海の氷塊のように、海に浮かんでいる氷は、いくら溶けても海水面の上昇には結びつかない。コップの水に浮かんだ氷が溶けても、コップの水位が変わらないこと(アルキメデスの原
理)と同じだ。
問題となるのは、大陸や島全体を覆う氷床や山岳氷河など、陸上にある氷が溶けた場合である。
陸上のある氷で最大のものは南極大陸の氷で、次がグリーンランドの氷である。もし、これが全部溶けてしまえば、世界の海水面は10メートル以上も上昇し、東京もニューヨークも水没してしまうと言われている。
温暖化による海面上昇に関しては、「IPCC」(気候変動に関する政府間パネル)の「第5次評価報告書」で警告されている。そこでのポイントは次の2点である。
・20世紀の100年間を通じて、世界の海水面は10~20センチ上昇した。
・今後2100年までに海面上昇は最低でも26センチ、最大で82センチとなる。
もし最大値の82センチになった場合、南太平洋の島嶼国家、ツバル、フィジィーなどは国土の一部が失われ、高潮による被害が大きくなる。日本では多くの干潟や砂浜が失われる。
さらに、海水面の上昇が1メートル以上になった場合、イタリアの「水の都」ベネチアは完全に海に沈んでしまう。東京の江戸川区、江東区のような海抜ゼロメートル地帯は、いくら堤防を強化しても、高潮になれば大浸水被害を受けるようになる。
したがって、南極のスウェイツ氷河の溶解は、大問題なのである。
(つづく)
この続きは1月27日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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