連載696 地球温暖化の不都合な真実(1) 長期的に見れば「氷期」に向かっているのか? (中2)
グリーンランドで牧畜ができた温暖期があった
1021年といえば、いまから1000年前である。
そんな時代になぜ、バイキングがアメリカ大陸に渡ったのかといえば、この時期、地球の気候はいまよりはるかに温暖だったからである。
この時期は、12世紀をピークとする「中世温暖期」と呼ばれ、当時はノルウェーでもワインが生産されていた(現在のブドウ栽培の北限はドイツ)。いまは氷に覆われているグリーンランドでは、10世紀末から14世紀半ばまでの約400年間、バイキングが牧畜を営んでいたのである。
860年ごろ、バイキングはノルウェーからアイスランドに進出し、さらに982年ごろ、アイスランドからグリーンランドに植民した。北欧古代文学の『グリーンランド人のサガ』によると、985年にビャルニというバイキングの男がアイスランドからグリーンランドに向かう途中に漂流し、見知らぬ土地を目にしたとされている。
そこがカナダのニューファウンドランドだったのは、間違いない。
その後、992年、ライフ・エリクソンとうバイキングの男がビャルニの見た土地への探検を思い立ち、仲間35人と出発して、ヴィーンランド(葡萄の地)、現在のニューファンドランドにたどり着いた。
こうして、バイキングはカナダで暮らし始め、漁労、牧畜を行い、村をつくった。
しかし、中世が半ばになると気候は寒冷化し、バイキングたちは村を捨て、新大陸を去ったのである。
このような歴史を知ると、現在の地球温暖化がなぜ問題視されているのか、疑問に思えてくる。むしろ、温暖化したほうがいいと思えてくる。
温暖化人為説は確定し政治課題となった
IPCCなどを中心として活動している気候学者たちは、地球温暖化は産業革命が起こったことにより始まったとしている。産業革命により、人類は石炭や石油などの化石燃料を大量に使うようになり、大気中へ排出される二酸化炭素(CO2)が増加した。その結果として温暖化が始まったのだと言うのだ。
「温暖化人為説」「二酸化炭素犯人説」に関しては、学者間で論争があったが、観測データと気候研究の蓄積から、いまでは間違いないとされている。「本当は温暖化していない」「温暖化はフェイクだ」という陰謀論も根強いが、完全に否定されている。
温暖化人為説は、IPCCの2013~14年の「第5次報告書」で確定した。ここでIPCCは、人間の活動が温暖化の原因になっていることについて「可能性が極めて高い」と結論づけた。
しかし、温暖化が始まってから20世紀末までの約150年間の気温上昇は約1度にすぎない。このまま化石燃料を大量に消費し続ければ、2100 年ごろまでに最大で4.8度上昇するとされるが、これはあくまで予測だ。
とはいえ、いまや地球温暖化は科学の問題ではなく、政治問題である。温暖化は教義となり、温暖化防止は全人類が存亡をかけて取り組まなければならない課題となっている。
2015年のCOP21(気候変動枠組条約)の「パリ協定」では、各国が「気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える」ことで合意している。
(つづく)
この続きは2月2日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。