連載700  地球温暖化の不都合な真実(2) 「脱炭素」を進めれば進めるほど貧しくなる! (中)

連載700  地球温暖化の不都合な真実(2) 「脱炭素」を進めれば進めるほど貧しくなる! (中)

(この記事の初出は1月4日)

 

「年完全EV化」の裏に「不都合な真実」

 EVは、「脱炭素」(カーボンニュートラル)の切り札とされている。そのため、世界各国は競うようにEVシフトを促進し、ガソリン車の販売を禁止してしまう「完全EV化」の目標年を定めている。
 先陣を切ったのは欧州で、欧州では2035年にはガソリン車ばかりか、ハイブリット車(HV)の販売も禁止するとしている。アメリカは、バイデン大統領が、「2030年には販売車の50%をゼロエミッション車にする」という方針を打ち出した。こうした欧米の動きに追随して、日本も遅ればせながら、「2035年ガソリン車の新車販売禁止」を決めている。
 しかし、各国の思惑通りに「完全EV化」が達成されるかどうかは、まったくわからない。なぜなら、EVには普及をはばむ「不都合な真実」が、いくつも存在するからだ。
 その1つが、前述した車載バッテリーの寿命と性能の問題である。ところが、車載バッテリーには、さらに別の大きな問題がある。環境破壊と人権問題だ。

南米では水が枯渇、コンゴでは子供労働

 車載バッテリーの生産には、リチウムやコバルト、ニッケル、マンガンなどの鉱物資源が大量に必要だが、この産地は限られている。
 たとえばリチウムは、南米のチリ、ボリビア、アルゼンチンの乾燥地帯に広がる塩湖で採掘されるが、そこではリチウム精製のために大量の水を使用する。そのため、環境破壊が起こり、住民の飲料水が枯渇するという問題が起こっている。
 また、コバルトの採掘地、アフリカのコンゴでは、子供を使っての強制労働が行われている。これは深刻な人権問題だが、欧米諸国、関連企業は、見て見ぬふりでスルーしている。
 さらに、コバルト、ニッケル、マンガンなどは、廃棄処理の過程で、土壌や水質を汚染する。とくに、マンガンは人が体内に入れると深刻な中毒症状を起こすので、問題は大きい。しかし、現在、バッテリーの廃棄処理には世界的な統一基準が存在しない。すべて各国任せの状態である。
 はたして、このような問題を放置したまま、クルマをガソリン車からEVに代えれば、それでいいのだろうか? 

 

ソーラーパネルの寿命はわずか約30年

 EVとともに、「脱炭素社会」に向けての最大のステップとされるのが、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換である。EV化でクルマが二酸化炭素を排出しなくなっても、その元である電気が化石燃料で発電されているのでは意味がない。
 石炭はもとより、石油、天然ガス(LNG)も廃止し、水力、風力、地熱、太陽光などによる発電に切り替えなければならないとされている。
 しかし、この再生可能エネルギーへの転換にも「不都合な真実」はいくつも存在する。それを全部取り上げては切りがないので、ここでは、太陽光発電の問題だけに言及する。
 まず、太陽光発電は、ソーラーパネルを張り巡らす必要があるので、広大な敷地が必要になる。そんな土地が日本にあるだろうか? また、こうしたことを考慮しないで進めると、山野がソーラーパネルで埋め尽くされることになり、景観も環境も破壊される。
 さらに、もっと問題なのが、ソーラーパネルの寿命問題だ。耐用年数はおよそ30年と、非常に短いのである。つまり、30年経ったら、ソーラーパネルは廃棄しなければならないが、これが簡単にはできない。

(つづく)

 

この続きは2月8日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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