連載706 地球温暖化の不都合な真実(3) じきに始まる「大移住・大移民時代」に備えよ! (完)
(この記事の初出は1月5日)
アメリカ国内でも南から北への動きが
環境移民のトレンドは、温帯地域の比較的気候が安定した先進国でも起こり始めている。
たとえば、アメリカ国内でも、「気候オアシス」(砂漠のなかのオアシスのように暮らしやすいところ)を求めて、移住する人々が出始めた。
コロナ禍でテレワークが普及したこともあり、こうした環境移住が加速化している。
アメリカ国内で気候オアシスとして新たに注目されてきたのが、ミシガンやミネソタ、サウスダコタなどの北部の州である。これらの州では、温暖化で冬の寒さが和らぐとされるので、移住する人間が増えている。
これまでは、温暖なフロリダやアリゾナ、テキサスなどに移住する人(とくにリタイアメント)が多かったが、最近は、ミシガンが移住人口でフロリダを上回るようになった。また、ミネソタのダルースは、最近、気候オアシスの最適地として有名になった。
ニューヨークで働く若い世代に、最近人気なのがバーモントである。バーモントはニューヨークに比べると物価が安く、コロナ禍を避けて移住したリモートワーカーに補助金を支給しているので、人気がさらに高まっている。
かつてバーモントの冬は厳しかったが、最近はそうではないという。
「大移住・大移民」時代がやって来る!
このように見てくると、地球温暖化対策は、脱炭素政策よりも移住政策に重点を置いたほうがいいと思える。そのほうが無理がないし、コストも少なくてすむ。
なにより、人類は、歴史的に見れば、常に移動する生物だった。
たとえば、日本のように国土が南北に長い国では、北国の北海道が今後は気候オアシスになると思われる。それなら、そこに向かう人々に適した政策を取ればいい。そのほうが、莫大なコストがかかるEVシフト、水素社会の建設、再生可能エネルギー転換などより、はるかにマシではないだろうか。
私たち自身、とくに若い世代は、これまでの常識を捨て、定住生活より移動生活を目指すべきではなかろうか。仕事も投資も起業も、これからは「移動」を前提に選択すべきだろう。単純に気候変動の影響を受けやすい地域の不動産は下がり、受けにくい地域の不動産は上がる。
おそらく人々は、南から北に移住するように、海辺にある都市から、より高いところにある都市に移住する。
南から北へ、低地から高地への移動が、今後の人類社会の最大のトレンドとなり、それによって経済も動いていくだろう。
つまり、「大移動、大移住時代」が始まろうとしているのだ。地球温暖化が進む時代は、そうした時代だと認識し、今後の人生設計を立てるべきだと、私は思っている。次世代の若者が、こうした認識の下にどんな時代を切り開いていくのか。それによって、私たちの社会の将来は決まるだろう。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。