連載708  岸田政権で「絶望未来」は深刻化 富裕層に続き若い世代まで続々と日本脱出 (中1)

連載708  岸田政権で「絶望未来」は深刻化
富裕層に続き若い世代まで続々と日本脱出 (中1)

(この記事の初出は1月11日)

 

首相としてやりたい政策はないのでは?

 現在の日本は、問題山積である。
 もっとも深刻な問題は、まったく経済成長ができず、年々、国民が貧しくなっていくことだ。この背景には、世界最速で進む高齢化と少子化による人口減少がある。これを放置しておけば、日本は確実に途上国に転落する。
 ところが、岸田首相を含めて政治家たちは、この最大の問題に真剣に取り組もうとしていない。だから、「新しい資本主義」などという口先だけのごまかしに走るのだ。
 1月5、6日、朝日新聞は2日にわたって岸田政権の意思決定の舞台裏を描いた記事を掲載した。これを読んで、私は本当に脱力してしまった。
 岸田首相は、「新しい資本主義」に関して、事務方が上げてきた提案に納得せず、うなっているばかりだったという。そして、最終的に問われると、「ビジョンをつくりたいんだよね」と言ったというのだ。記事はこう続ける。
 《長年の持論にもかかわらず、岸田は「ビジョン」をこれからつくるのだという。岸田派の関係者は「人から提案されたものを採り入れてきたから、実は具体性がない」と認める。本当は首相としてやりたい政策はないのではないか---。与党議員や官僚の間ではそうした声もささやかれ始めた》

なにが問題か、原因がなにかもわからない

 ビジョンがないのは、岸田首相ばかりではない。与野党を問わず、この国のほとんどの政治家がそうだ。だから、先の選挙は「バラマキ合戦」になった。
 ビジョンがなければ、すべての問題は放置される。なにが問題なのかもわかっていないからだ。ただ、昨日までのことを繰り返して「無為な日々」が過ぎていく。
 日本社会が時代から取り残され、日本経済がここまで落ち込んでしまった原因はなにか? この根本のところをわかれば、解決する方法も見えてくる。病気と同じで、原因がわからなければ治療しようがない。
 それ以前に、現状認識として、いまが危機だという意識があるのだろうか?
 岸田首相にいたっては、結局、総理になること自体が目的だったとしか思えない。
 ほかの政治家も、なにかをやるために政治家になったのでなく、政治家になることだけ(当選することだけ)が目的だから、日本はいつまでたっても改革されない。

「ジャパニフィケーション」と病人扱い

 危機意識に関して言うと、いまの日本の危機はなまやさしいものでない。深刻な危機だ。なにしろ、高齢人口が全人口の3割に達し、この先の30年ほどで人口が3000万人も減るというのは、これまでどの国も経験したことがないからだ。
 経済にいたっては、この30年間で名目GDPは1.5倍になっただけ。ほとんど成長していない。落ち込みを避けようと財政出動を繰り返し、日銀が異次元緩和を行い、国債発行による財政赤字をいくら積み上げても、うんともすんとも言わなかった。そのため、給料は上がらず、デフレがずっと続いてきた。
 この間、アメリカのGDPは4.1倍、英国は4.9倍になり、韓国にいたっては17.8倍、中国はなんと75.0倍になった。
 それなのに、いまだに短期的な視点で「アベノミクスは成功だった」などと言っているのだから、海外は日本を完全にバカにしている。
 国内ではほとんど使われていないが、経済の長期低迷を「ジャパニフィケーション」(Japanification)と言うことが定着している。日本は、完全な病人扱いなのだ。

(つづく)

 

この続きは2月18日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

 

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