連載710 岸田政権で「絶望未来」は深刻化
富裕層に続き若い世代まで続々と日本脱出 (下)
(この記事の初出は1月11日)
日本人の3分の1は将来に対して悲観的
2020年の博報堂生活総研『生活定点』調査によると、日本人の3分の1以上が、将来に対して悲観的である。世代別に見ると、とくに50代以上の世代が自分の将来に対してもっとも悲観している。
《年齢階級別「あなたの将来のイメージは暗い」と回答した割合》
「20代」31.7%(男性35.1%/女性28.2%)
「30代」29.4%(男性35.5%/女性23.1%)
「40代」35.9%(男性37.5%/女性34.4%)
「50代」46.1%(男性48.6%/女性43.4%)
「60代」43.8%(男性42.9%/女性44.7%)
なぜ、50代以上の世代が将来をもっとも悲観しているのだろうか?
それは、この世代がバブル経済を経験しているからだ。60代世代が大学を卒業して社会人になったのは、1976年~1985年、同じく50代世代は1986~1995年である。つまり、彼らの多くはバブルの好景気を経験しており、その後の低迷との落差がわかっているから、この先、もうあのような時代は来ないと認識できるのだ。
しかし、その後の若い世代は、「失われた30年」しか知らない。つまり、景気も給料も物価も上がらないというのが日常で、この先も同じ日常が続くと思い込まされ、50代以上世代より悲観的でないのである。
これは、あまりにも残酷な話だ。本来なら、50代以下の世代がもっとも将来を悲観しなければならないからだ。とくに、20代世代の将来は真っ暗である。彼らが50代を迎える2050年の日本を想像してみればいい。
一生涯の貧困が宿命づけられている
すでに、若い世代の「絶望未来」について、何冊も本が書かれている。そのなかで以下の2冊は、読むだけで本当に落ち込む。
まず1冊は、明治大学国際日本学部の教授の鈴木賢志氏の著書『日本の若者はなぜ希望を持てないのか』(草思社、2015)だ。もう7年前の本だが、鈴木氏は、若者の将来が暗い原因を、受験や就職などで1度失敗するとなかなか挽回できない、日本の社会システムにあると指摘している。
なぜ、この社会構造を変えられなかったのだろうか?
もう1冊は、『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』 (藤田孝典、講談社現代新書、2016)である。著者の藤田氏は、はっきりこう言っている。
「現在の若者たちはもはや、ロスト・ジェネレーションのような一時的な就職難や一過性の困難に置かれているのではない。雇用環境の激変を一因とする、一生涯の貧困が宿命づけられている」
これから社会に出る世代は、「低福祉・高負担」社会の歯車として、いくら働いても貧困から抜け出せない宿命にあるのだ。
いま私たちが選択すべきことは2択のみ
さて、このような絶望的な日本の将来をどうすべきかは、すべていまを生きる私たちの選択にかかっている。
その選択は、2択しかない。
もうどうにもならないと諦めて行動を起こさずに、なるにまかせて暮らすのか? それとも、いまのままでは日本は本当に駄目になると考え行動を起こすか? の2択だ。
ただし、2番目の「行動を起こす」については、さらに2択ある。1つは、いまの社会、政治を変えるために、今後の選挙で本当に改革をするビジョンがある政治家を選ぶ、現在所属している組織などで改革を進めていくなどだ。
もう1つは、もう本当に日本を諦めて海外に移住することだ。
この最後の選択肢は、すでに富裕層を中心に、かなり以前から行われている。もはや、価値を失う日本円で資産を持つことがもっともリスキーだから、わかっている人間、できる人間から、この国を脱出している。かつて私は、そういう人々を何人も取材した。
しかし、最近の傾向は、富裕層ではなく、中間層の若い世代が続々と海外に出ていることだ。とくにコロナ禍になってからは、海外移住希望者が増えている。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。